日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカザ」の意味・わかりやすい解説
アカザ(一年草)
あかざ / 藜
[学] Chenopodium album L. var. centrorubrum Makino
アカザ科(APG分類:ヒユ科)の一年草。茎は高さ1.5~2メートル、よく分枝しピラミッド形の株となり、縦に赤紫色の太い筋が通って角ばり無毛。葉は互生し菱形(ひしがた)状卵形で長さ3~6センチメートル、幅2~3センチメートル、質は柔らかく緑色。若芽の表面中心は美しい赤紫色の粉に覆われるが、成長するとこの色は消える。夏から秋にかけ、枝先に淡緑色の小花を密集した円錐(えんすい)状の花穂をつける。花は両性花で花被(かひ)5枚、雄しべ5本、雌しべ1本。果実には黒色で光沢のある種子1個ができる。中国原産といわれ、栽培されているが野生化もしている。若葉が紅(あか)くならないものが基本種のシロザで一名シロアカザ、ギンザといい、ユーラシア大陸原産で、雑草として世界各地に広がり、荒地や畑などに普通にみられる。若葉は食用となり、また、民間では、葉をもんだ汁を虫さされ、切り傷に外用し、茎は軽いので杖(つえ)として利用される。
[小林純子 2021年1月21日]
利用
日本では戦時中に野菜の代用にしたが、インドでは現在も野菜として栽培され、ニュー・デリーなどの市場に並ぶ。種子を挽(ひ)いた粉からはパンをつくったり、台湾のパイワン族などはアワ酒の麹(こうじ)の代用にするため畑で栽培する。種子にはタンパク質12~19%、脂肪4~6%、炭水化物65%を含む。また別種のキノアC. quinoa Willd.はアンデス原産で、インカ時代からの穀物である。
[湯浅浩史 2021年1月21日]
アカザ(淡水魚)
あかざ / 赤座
[学] Liobagrus reini
硬骨魚綱ナマズ目アカザ科に属する淡水魚。本州中部以南、四国、九州にも分布する。北限は秋田県雄物(おもの)川上流。近縁種は東アジアの中・南部から東南アジア、南アジアにかけて広く分布。全長10センチメートル。体は橙褐色(とうかっしょく)で細長く鱗(うろこ)がない。目は小さく、8本の太い口ひげがある。背びれと胸びれには各1本のとげがあり刺されると痛む。脂(あぶら)びれは低くて長く、尾びれの後縁は円い。河川の中流から上流の石や礫(れき)のある底にすみ、水生昆虫を主食とする。産卵期は5~6月で、寒天質膜に覆われた卵塊を産む。
[多紀保彦]