改訂新版 世界大百科事典 「アカザ」の意味・わかりやすい解説
アカザ (藜)
goosefoot
Chenopodium album L.var.centrorubrum Makino
食用のために栽培するアカザ科の一年草。芽心や若い茎葉が赤いのでアカザの名がある。赤みの目だたないシロザC.album L.(英名lamb's-quarters)は畑地や荒地の雑草で,好窒素植物として有名である。茎はよく分枝し,生長のよいものでは1.5mを超える。葉はひし形状の卵形で柔らかく白い粉をふく。花は8~10月に咲き,穂状の軸に密集する。花序は円錐花序。花被は小さく長さ約1mm。種子は扁円形で径約1.2mm,黒色でつやがある。若い茎葉はゆでて食用とされる。ビタミンA,ビタミンB2,ビタミンCに富み,第2次世界大戦中は救荒植物として活用されたが,最近ではホウレンソウなどの普及によりほとんど利用されない。ヨーロッパでもかつてはシロザを食用としたが,今ではほとんど食べない。茎は乾燥させて杖にする。全草や茎は薬用に供され,解熱,虫くだしなどに有効という。シロザはヨーロッパ原産だが,今では世界中の温帯域に帰化している。アカザは古く中国から伝えられたといわれるが,正確なことはわかっていない。
アカザ科Chenopodiaceae
双子葉植物でヒユ科に近縁である。アカザ,ホウレンソウ,テンサイなどを含み,全世界に約100属1500種がある。とくに乾燥地帯や海岸の塩性地に多い。高い水利用効率をもち,光合成能の高いC4植物を含むことで有名である。多くは一年草,まれに低木となる。葉は単葉で通常互生し,托葉はない。葉の形から,アカザ科の植物は英名をgoose-foot familyと呼ばれる。花は小さくしばしば雌雄が分化する。花被片は緑色で2~5個,ときに退化する。おしべは花被片と同数か少数。子房は1室で胚珠は1個だが,柱頭は2裂する。果実は瘦果(そうか),まれに液果で,宿存性の花被片につつまれる。胚はらせん状に巻いたものや輪状に胚乳をとりまくものがあり,科をさらに区分する場合の指標形質になる。一般に好窒素植物であり,含窒素色素であるベタシアニンを含むこと,乾燥に強く高い光合成能をもつことなども特徴的である。
生育の速い一年草が多く,ビタミン類に富み,多くのものが野菜として利用される資質をそなえている。野菜として葉を食用とするものには,フダンソウ属のフダンソウ,アカザ属のアカザ,ホウレンソウ属のホウレンソウなどが,また種子を食用にするものにキノア(アカザ属)がある。中でもホウレンソウは世界的に普及している。さらにフダンソウと同種であるが,サトウダイコンは肥大した根から砂糖をとる重要作物である。アカザ属のアメリカアリタソウは強力な駆虫作用のある成分を含み,薬用に利用される。
執筆者:矢原 徹一
アカザ
Liobagrus reini
ナマズ目アカザ科の淡水魚。日本特産で本州(太平洋側では静岡県以西,日本海側では秋田県以南),四国,九州などに分布。水の澄んだ川の上・中流域にすむ。全長7~10cm,形はギギに似るが体色は赤褐色で,尾びれの後縁は二叉(にさ)せず外側へ湾曲する。脂びれの後縁は体に癒着する。頭部の前端はやや上下に平たく,8本の口ひげがある。背びれと左右の胸びれとにそれぞれ1本ずつの毒をもったとげがあり,これに誤ってさされると痛む。昼間はおもに水底の石の下などに隠れ,夜間や雨で水の濁ったときなどに出て餌をあさる。餌はおもに水中にすむ昆虫類の幼虫など。産卵期は5,6月ごろで,石の下に産卵し親は卵を守る。卵は寒天質の膜に覆われ,多数が集まって卵塊をなしている。ほとんど食用にしない。アカザ属の魚は日本以外のアジア東部諸地域から7種が知られている。
執筆者:中村 守純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報