日本大百科全書(ニッポニカ) 「サポニン」の意味・わかりやすい解説
サポニン
さぽにん
saponin
植物に広く存在する配糖体(糖類と炭水化物の複合体)で、炭水化物の部分が窒素を含まない多環式化合物からできているものの総称。水溶液は泡立ちやすく、コロイド溶液をつくり、とくに動物に対して種々の強い生理活性を示す。ムクロジの果皮にはサポニンが含まれ、泡立ちやすいことを利用して古くからせっけんのかわりに使われていた。
糖部分は、D-グルコース、D-ガラクトース、L-アラビノースがよく知られており、メチルペントース、ウロン酸、デオキシ糖などの場合もみられる。非糖部分(アグリコン)はサポゲニンとよばれ、トリテルペノイドのものと、ステロイドのものとに二分される。トリテルペノイドサポニンは、セネガ根(北アメリカ原産ヒメハギ科の多年草セネガの根)、キキョウ根、甘草(かんぞう)(中国北部に自生するマメ科の多年草)、キラヤ皮(南アメリカに分布するバラ科の常緑高木キラヤのコルク層を除去した樹皮)などから抽出され、甘草の根や茎にあるグリシリジンはその一例である。生薬(しょうやく)としてのトリテルペノイドサポニンの明確な薬理作用は今後の研究にかかっている。ステロイドサポニンはユリ科、ヤマノイモ科、ゴマノハグサ科の植物から得られ、サルサ根(熱帯アメリカ原産のユリ科サルトリイバラ属の落葉低木数種の根)のサルササポニン、ジギタリス(ゴマノハグサ科)の葉からとれるジギトニンなどがある。ステロイドサポニンは、強心作用、利尿作用など強い生理活性を示すため、古くから生薬として使われてきた。細胞に対しては表面活性剤のような作用をし、細胞膜の構造を破壊したり、物質の透過性を高めたりする。また、ステロイド、アルコール、フェノールなどとは難溶性の分子化合物を形成する。サポニンに溶血作用があるのは、赤血球膜中のコレステロールがサポニンと強く結合し、膜構造が壊されてしまうためと考えられる。
[菊池韶彦]