土地や有価証券など保有資産の値下りによる損失をいう。キャピタル・ゲインcapital gainsに対する語。日本においては1960年代末から1970年代初期にかけて企業などが大きなキャピタル・ゲインをねらって大量の土地を抱え込んだが、ブームの消滅により逆に多額のキャピタル・ロスを被り、その経営を悪化させ、なかには破産するものまで現れた。
また、大量発行されている国債との関連でキャピタル・ロスが問題とされることがよくある。本来、金融を緩和し利子率を下げるべき景気状況においてさえ、政府はよりいっそうの国債を発行するために、利子率を引き上げ、国債価格を安くしなければならなくなるかもしれない。これは一方において銀行にキャピタル・ロスを負担させ、他方において企業の投資資金調達コストを上昇させ、いわゆるクラウディング・アウト(民間資金需要の締め出し)を引き起こす、というのである。
土地に関しては、1980年代後半のバブル経済のときに企業は多くの土地を抱え込み、バブル崩壊後の土地の値下りによって、1970年代初期に比べてはるかに膨大なキャピタル・ロスが発生したし、アメリカにおけるサブプライムローン問題(2007年8月)、その後のリーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)(2008年9月)は、先進各国に株安による大きなキャピタル・ロスを発生させた。
[大塚勇一郎]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…〈インカム・ゲイン〉とは,資産を保有することによって得られる収入,具体的には,有価証券(株式,債券)の配当および利子収入等をいう。これに対し,資産の値上がり(値下がり)によって得られる収入(損失)を〈キャピタル・ゲイン〉(〈キャピタル・ロスcapital loss〉)という。
[インカム・ゲイン]
インカム・ゲインの代表例としては,株式からの配当,債券からの利子や償還差益,証券投資信託からの収益分配金などがあげられる。…
…また賃金や利子のように周期的に安定的に予測可能な所得と,宝くじの賞金のような不安定で予測不可能な所得との間の区別もなされていない。また逆に,キャピタル・ロスのように資産価値の減少となるものは所得の計算に際し控除される。このように,所得の定義をできるだけ広げ各種の所得を差別せずに課税しようとする所得の定義は,〈包括的所得〉の概念と呼ばれている。…
…
【資産価格の決定の仕組み】
各種の資産の価格は,各種の資産の単位期間当りの期待収益率が均衡化するように決定される。単位期間当りの期待収益率とは,単位期間内に当該資産の保有から得られるインカム・ゲイン(地代収入,配当収入,利子収入等をいう)の期待値とキャピタル・ゲイン(当該資産の市場価値の上昇)またはキャピタル・ロス(当該資産の市場価値の低下)の期待値との合計額を単位期間の初めにおける当該資産の市場価値で除した値をいう。したがって,単位期間内のインカム・ゲインの期待値と単位期間の終りの当該資産の市場価値の期待値とが与えられているという条件のもとで考えると,期待収益率の決定機構を明らかにすることと資産の価格の決定機構を明らかにすることとは同値である。…
※「キャピタルロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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