改訂新版 世界大百科事典 「キャラコ禁止法」の意味・わかりやすい解説
キャラコ禁止法 (キャラコきんしほう)
東インド会社によるインド産綿布の輸入を制限・禁止した1700年および20年のイギリスの法令の総称。17世紀末,イギリス東インド会社がインド綿布の輸入を激増させたために,伝統産業である毛織物工業やスピタルフィールズの絹織物業を圧迫し,政治問題化した(キャラコ論争)。論争は議会内にとどまらず,院外でも大規模なキャラコ輸入反対デモが繰り返されたため,1700年,国内の繊維業者保護の見地から捺染済み綿布の輸入が禁止され,さらに1720年法は,再輸出用以外のすべての綿布輸入を禁じたうえ,22年末以降のほとんどの綿布の使用をさえ禁止した。名誉革命以後のイギリス政府が商業資本よりも生産者つまり産業資本の保護を政策目標としたことの表れと解するむきもあるが,全体にあまり有効な法令ではなかった。また,使用禁止規定が国内で生産の定着していたファスティアン(綿布の一種)などを例外としたため,毛織物業が保護されたというより,綿工業が促進されたともいえる。74年に廃止された。
執筆者:川北 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報