キューポラのある街(読み)きゅうぽらのあるまち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キューポラのある街」の意味・わかりやすい解説

キューポラのある街
きゅうぽらのあるまち

日本映画。1962年(昭和37)、浦山桐郎(うらやまきりお)監督。原作早船ちよ鋳物工場が集まる埼玉県川口市。中学生ジュン吉永小百合(よしながさゆり)、1945― )の父は工場を解雇され、家族は貧窮に追い込まれる。ようやく父には望む職が決まり、一家の生活が楽になろうという時、ジュンは自立を目ざして働きながら定時制高校へ進学する道を選ぶ。大工場による自動化という時代の流れによって生ずる職人の一家の困窮が描かれながらも、本作をさわやかな味わいにしているのは、ジュンとその弟タカユキの生き生きとした姿、そしてこの姉弟と在日朝鮮人姉弟との友情である。浦山の監督デビュー作であり、主演の吉永小百合の代表作でもある。

[石塚洋史]

『『世界の映画作家31 日本映画史』(1976・キネマ旬報社)』『『映画史上ベスト200シリーズ 日本映画200』(1982・キネマ旬報社)』『佐藤忠男著『日本映画史3、4』増補版(2006・岩波書店)』『猪俣勝人・田山力哉著『日本映画作家全史 下』(社会思想社・現代教養文庫)』『文芸春秋編『日本映画ベスト150――大アンケートによる』(文春文庫ビジュアル版)』

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デジタル大辞泉プラス 「キューポラのある街」の解説

キューポラのある街

①早船ちよによる児童文学作品。鋳物の街、埼玉県川口市を舞台に、鋳物職人の娘ジュンがさまざまな困難にめげずまっすぐに成長していくさまを描く1961年刊行。1962年、日本児童文学者協会賞受賞
②1962年公開の日本映画。①を原作とする。監督:浦山桐郎、脚色今村昌平、浦山桐郎、撮影:姫田真佐久。出演:東野英治郎、吉永小百合、市川好郎、鈴木光子、森坂秀樹、浦山桐郎ほか。第13回ブルーリボン賞作品賞、主演女優賞(吉永小百合)、新人賞(浦山桐郎)受賞。第17回毎日映画コンクール男優助演賞(東野英治郎)受賞。

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世界大百科事典(旧版)内のキューポラのある街の言及

【ホームドラマ】より

…十朱(とあけ)幸代ほか出演)を一つの原型として,以後各局が競ってホームドラマを作るようになり,ホームドラマはテレビドラマの中核的存在となったばかりでなく,テレビという大衆的メディアのなかでも最も大衆に好まれる番組の一つとして,昭和30年代から今日に至るまで,ほぼ変わらぬ隆盛ぶりを示す。 一方,映画のホームドラマは,この間衰退の道をたどり,逆に家族のそれぞれを不幸の底において,試練のなかでの人間的真実と人間の成長を描く《キューポラのある街》(1962。浦山桐郎監督日活作品,吉永小百合ほか出演)のような〈アンチ・ホームドラマ〉(この命名は映画評論家の岩崎昶による)が,映画独自の試みとして行われたりもした。…

※「キューポラのある街」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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