日本大百科全書(ニッポニカ) 「早船ちよ」の意味・わかりやすい解説
早船ちよ
はやふねちよ
(1914―2005)
小説家、児童文学作家。岐阜県古川町(現飛騨(ひだ)市古川町)に生まれ、高山市で育つ。小学校を卒業して製糸工場などに働き、その間に文学に関心を抱き、1962年(昭和37)には埼玉県浦和市(現さいたま市)に夫の井野川潔(いのかわきよし)(1909―95、教育運動家)とともに児童文化の会を設立、進歩的な児童文化運動を推進する。作品は、映画化されて有名になった『キューポラのある街』(1961)をはじめ、自伝的な『峠』『湖』『街』『冷たい夏』『炎群の秋』『熱い冬』の六部作(1979)など、児童文学作品には『七ヒキノコガニ』(1941)、『ポンのヒッチハイク』(1962)、『春のシュトルム』(1974)などがある。社会批判の眼(め)と人間信頼の心に裏打ちされた作品が多い。その後、75歳まで小説、随筆、童話と幅広い執筆を続けた。故郷の岐阜県飛騨市古川町三之町に記念館「早船ちよ館」(1997開館)がある。
[上笙一郎]
『『いさごむしのよっ子ちゃん』(1974・新日本出版社)』▽『『わたしの飛騨』(1975・けやき書房)』▽『『あすも夕やけ』(1976・新日本出版社)』▽『『あすへ羽ばたく』(1977・講談社)』▽『『チューリップばたけの花アブの子』(1977・PHP研究所)』▽『『子ども発見 さあ、手をつないで』(1978・文化出版局)』▽『『ちさ・女の歴史 第1部 峠』『ちさ・女の歴史 第2部 湖』『ちさ・女の歴史 第3部 街』『ちさ・女の歴史 第4部 冷たい夏』『ちさ・女の歴史 第5部 炎群の秋』『ちさ・女の歴史 第6部 熱い冬』(1979・理論社)』▽『『緑のオーケストラと少女』(1979・小学館)』▽『『いっぱいのひまわり アジアの心――平和・労働・愛』(1980・新日本出版社)』▽『『いのち生まれるとき』(1982・理論社)』▽『『「あの子」はだあれ』(1982・新日本出版社)』▽『『サロルン・リムセ 失われたふるさと』(1983・童心社)』▽『『円空』(1983・草土文化)』▽『『原爆児童文学集8 虹』(1985・汐文社)』▽『『童話と絵本のせかい なにを、どう書くか』(1985・講談社)』▽『『おとなの童話』(1987・本阿弥書店)』▽『『冬ごもりのなかまたち』(1989・岩崎書店)』▽『『タロウとユリのまきば』(1989・けやき書房)』▽『『キューポラのある街』全6巻(1991・けやき書房)』▽『『花ぐるまの井戸』(1997・国土社)』