改訂新版 世界大百科事典 「キリウジガガンボ」の意味・わかりやすい解説
キリウジガガンボ (切蛆大蚊)
Tipula aino
双翅目ガガンボ科の昆虫。成虫は体長14~18mm,前翅の長さは19mm内外。体は淡褐色。触角は13節で黒褐色であるが基部3節は黄褐色。前胸背は灰褐色で数本の不明りょうな暗褐条がある。腹部側面は黒褐色で他は淡褐色である。翅はかすかに褐色を帯びるが透明で,前縁はとくに褐色を帯びる。平均棍とあしは淡褐色。本州,四国,九州と韓国に分布する。幼虫は十分成長すると30mmぐらいになり全体灰褐色で尾端に3対の短い肉質の突起がある。土中で蛹化(ようか)し,2週間くらいで羽化する。年2回春と秋に発生する。幼虫は地下にトンネルを掘って植物の芽や根を食い切って荒らすので,俗にキリウジと呼ばれイネやムギの害虫として知られる。イネでは直接の食害のほか〈浮き苗〉や〈転倒苗〉ができたり種子の発芽阻害を起こす。また,ムギその他農作物や野菜類の根を害する。第1回成虫は3~5月中旬に現れ,第2回は8~9月に発生するが,春の幼虫による被害が大きい。
執筆者:長谷川 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報