日本大百科全書(ニッポニカ) 「キルスト」の意味・わかりやすい解説
キルスト
きるすと
Hans Hellmut Kirst
(1914―1989)
ドイツの作家。東プロイセンのオスタローデ生まれ。第二次世界大戦中は幕僚将校。敗戦後、一時抑留されるが、その後農夫、園丁など雑多な職業を転々とする。ヨーロッパ、アフリカを巡ったあと著述に専念、ミュンヘンの近郊フェルダフィングに住む。『われら彼をやくざと呼ぶ』(1950)、『小都市反乱』(1953)を経て、三部作『08/15(ぜろはちいちご)』(1954)で世界的名声をあげる。大衆性に富む作風で、さらに三部作『兵士、将校、将軍』(1969・『兵士の反乱』『将校工場』『夜の将軍たち』の3作よりなる)、『長いナイフの夜』(1975)などを発表。一連の軍隊もので、軍の因襲と幹部将校たちの人間追求を試み、歴史的ドキュメントの手法をとる。反共主義者で、かつ徹底した反ナチを貫いた。
[古賀保夫]
『金森誠也訳『長いナイフの夜』(集英社文庫)』