ギャス(読み)ぎゃす(英語表記)William Gass

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギャス」の意味・わかりやすい解説

ギャス
ぎゃす
William Gass
(1924―2017)

アメリカ小説家、評論家。ノース・ダコタ州ファーゴ生まれ。ケニオン大学卒業後、コーネル大学大学院で博士号を取得。ワシントン大学で哲学教授、国際作家センター所長などを歴任。1960年代からアメリカにおける前衛小説の理論と実践に深くかかわった。中西部の田舎(いなか)町を舞台にいわば虚空に向かって吐き続けられる果てしない独白によって構成される長編小説『オーメンセッターの幸運』(1966)や短編集『アメリカの果ての果て』(1968)、女性のヌード写真や活字の図案化を通して言語の肉体化を目ざすメタフィクション『ウィリー・マスターズの孤独な妻』(1968)などを発表。大作トンネル』(1995)では、ニュルンベルク裁判の正当性を疑う学術書『ヒトラー支配下のドイツにおける有罪無罪』を執筆した歴史教授が己の人生の孤独な過去をトンネルのように掘り起こしてゆくのだが、結局は自らの吐き出す独白めいた言葉残骸(ざんがい)の中に埋没してしまう。ほかに短編集『カルテジアン・ソナタその他』(1998)、メタフィクション理論を中核とする評論集『小説と人生模様』(1970)、『ブルーについての哲学的考察』(1976)、『言葉の中の世界』(1978)、『言葉の住処(すみか)』(1985)、『形式発見』(1997)等がある。1977年(昭和52)、1989年(平成1)来日

[杉浦銀策]

『杉浦銀策訳『アメリカの果ての果て』(1979・冨山房)』『楢崎寛他訳『集英社ギャラリー「世界の文学」アメリカ2』(1989)』『須山静夫・大崎ふみ子訳『ブルーについての哲学的考察』(1995・論創社)』『シンシア・オージック編、東眞理子他訳『アメリカエッセイ傑作選』(1999・DHC)』

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