改訂新版 世界大百科事典 「ギンゴケ」の意味・わかりやすい解説
ギンゴケ
Bryum argenteum Hedw.
人家の周辺で最も普通なカサゴケ科の蘚類。世界中に遍在し,南極大陸にまで分布しているが,大気の乾燥や汚染に対しても強い抵抗性を示し,大都市にも生育する。日本でも,人家の石垣,コンクリート,土の上をはじめ屋根の上にまで生えるが,山地にも多く,富士山の頂上にも分布している。植物体は小さく,銀色または白緑色で,密なビロード状のマットをつくる。茎は細く,高さ3~10mm,密に重なり,広卵形,先端部の細胞は葉緑体を欠き透明で,このために植物体が白く見える。雌雄異株。蒴(さく)は短い円筒形で下垂する。胞子による通常の繁殖のほか,無性芽によってもさかんに増殖する。同属のハリガネゴケB.capillare Hedw.も世界中に広く分布し,日本でも各地にごく普通にみられる。ギンゴケに比して植物体が大きく,葉は狭卵形で先端まで緑色,葉縁は細長い細胞によって縁どられ,乾くと強くらせん状にねじれる。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報