クダマキモドキ(その他表記)Holochlora japonica

改訂新版 世界大百科事典 「クダマキモドキ」の意味・わかりやすい解説

クダマキモドキ
Holochlora japonica

直翅目キリギリス科の昆虫。木の葉状のつやつやした前翅をもつ中型のキリギリスの仲間。樹上にすみ,本州以南,台湾,東南アジアに分布する。江戸時代にはクツワムシウマオイなどをさして,その鳴声が,機織のとき紡車を巻く音のようだとして〈クダマキ(管巻)〉といっていたようで,クダマキモドキの名は,それらに似た虫という意である。体長は雄23mm内外,雌30mm内外,前翅長約45mm。翅端までは雌で55mm内外,雄はこれよりやや小さい。全体緑色。頭部は小さく,眼も小さい。前胸背板は短め。前翅は照葉樹の葉のようでつやがある。前翅端は丸みを帯びる。雄の発音器は前翅の基部にあり小さい。雌の産卵管は幅広くがんじょうな鎌形,灰褐色に白色,紅色,黄色などが加わり,体色の緑色に対比して美しい。雄は小さくグルルルルと発音する。成虫は夏季に出現し,灯火にも飛来する。強い産卵管で小枝に卵を産みつける。果樹園ではこれがもとで果樹の枝折れを起こしたりするので害虫となる。別名サトクダマキモドキ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クダマキモドキ」の意味・わかりやすい解説

クダマキモドキ
くだまきもどき / 擬管巻
[学] Holochlora japonica

昆虫綱直翅(ちょくし)目キリギリス科に属する昆虫。中形ないし大形の美しいツユムシ類の1種。体形は縦に平たく、全体につやのある緑色で、側面からみると1枚の新鮮な木の葉のようにみえる。体長20~30ミリメートル。翅端まででは42~58ミリメートル。頭部は小さく、複眼小形胸部も大きくない。前翅は幅広く、翅端は円い。後翅は半円状であるが、前翅下に畳まれるとその先端はとがり、先端部が前翅端を越えてみえ、その部分は前翅に続く同色の緑色部となる。雄前翅の発音器は小さいので、グルルルと小さく発音する程度である。雄の腹部最後節は台形に近く、後端の中央から深く切れ込んでおり、亜生殖板の後半は側縁に平行するが狭まっており、後端の中央は浅くV字形にへこむ。雌の産卵管は頑丈で短く、鎌(かま)形で上方に反っている。本州以南、東洋の熱帯に広く分布し、成虫は夏季に出現する。

 なお、「クダマキ」の名は、その形が機(はた)織りに使われる管巻(くだまき)に似るところから、江戸時代に一部のキリギリス類にあてられたが、「クダマキモドキ」はこの名からの派生名で、この管巻に似たものという意。一部にサトクダマキモドキとも称されるが、クダマキモドキの和名が正しい。

[山崎柄根]


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