改訂新版 世界大百科事典 「クツワムシ」の意味・わかりやすい解説
クツワムシ (轡虫)
Mecopoda nipponensis
直翅目キリギリス科の昆虫。秋の鳴く虫の一つで,雄は夜間,後翅を少しあげてガチャガチャ(あるいはカシャカシャ)というように大きくやかましい音を立てて鳴く。この音が,あたかもウマの口にはませる〈くつわ〉の鳴る音のようであるところからこの名が出た。俗称ガチャガチャ。関東地方より九州にかけて分布し,林近くの背の高い草原にすむ。体長35mm内外。翅端までの長さは50~70mm。体色には緑色型と褐色型とがあるが,緑色型のものでも発音器の部分は褐色がかる。前翅は幅広く,その先端は丸みがあり,木の葉状をしていて,林の下草などにいると周囲の草の葉と見分けにくいほどである。発音器は前翅の基方にあり大きい。後脚は長い。雌の産卵管は剣状で長く,土中に腹ごと深くさしこんで産卵する。成虫は8,9月に出現する。雄の鳴声は大きく,多数で群がって鳴いたりするときわめて騒々しい。シーズンになると,夜店などで籠に入れて売られ,これを軒下につるして楽しむ人も多い。伊豆以南の太平洋岸沿いの暖地や対馬などにはタイワンクツワムシM.elongataが分布している。これは前翅が細長く,その先端が三角形にとがることにより区別される。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報