日本大百科全書(ニッポニカ) 「クモウツボ」の意味・わかりやすい解説
クモウツボ
くもうつぼ / 雲鱓
starry moray
[学] Echidna nebulosa
硬骨魚綱ウナギ目ウツボ科に属する海水魚。八丈島、和歌山県串本(くしもと)町以南、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、南大東島、台湾など太平洋、インド洋に広く分布する。体は伸長する。肛門(こうもん)は体の中央部近くに位置し、そこでの体高は全長の約6.3~3.7%。脊椎骨(せきついこつ)数は119~126。吻(ふん)は短くて広い。前鼻孔(ぜんびこう)は管状。後鼻孔は目の前縁上方に開き、孔(あな)の周辺は小さな個体では短いぎざぎざした皮弁(皮質突起)であるが、大きな個体では小さな触鬚(しょくしゅ)(ひげ状の突起)になる。目は小さく、吻端よりも口裂後端近くに位置する。上顎(じょうがく)は下顎にかぶさる。鰓孔(さいこう)は後方に向かう皮弁をもち、体側面の中央に位置する。口は小さく、後端は目の後縁直下までしか開かない。上下両顎歯は1~2列で短く、頑丈で臼歯(きゅうし)状。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は主上顎骨歯より大きく、前上顎骨板の中央歯とつながり、主上顎骨のはるかに後方まで伸びる。主上顎骨の歯列の長さは鋤骨の歯列の長さよりも短い。前上顎骨板歯の数と形に二次性徴がみられ、大きな雄では外列歯は長く、いくぶんとがり、鋸歯縁(きょしえん)をもつ。体は淡色で、24~30の黒点や黒斑(こくはん)が頭部や体側面に2列に並ぶ。黒斑の中央部には、普通は明瞭(めいりょう)な淡色の斑があり、黒斑の周囲からは放射状の黒線が出る。上列の黒斑は背びれに侵入する。下列の黒斑はときどき腹面で反対側のものとつながる。生時は目と前鼻孔は黄橙(こうとう)色で、黒斑の中央部は橙色。最大体長は100センチメートルになるが、普通は50センチメートルほど。潮間帯の岩礁域、サンゴ礁域、環礁内、サンゴ礁の外壁などにすみ、頭部を露出させていることが多い。夜行性で、おもに甲殻類を食べる。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]