改訂新版 世界大百科事典 「クランデロ」の意味・わかりやすい解説
クランデロ
curandero[スペイン]
ラテン・アメリカの土着の呪医。治療に当たる病いの原因は各種あり,アイレ(空気)のバランスのくずれ,スストやエスパント(驚き),ムイナ(極度の怒り),寒暖のバランスのくずれ,邪視,ナグアル(人にとりついている動物)やトノ(守護動物)と人との不調和,各種の霊の働き(メスティソ姿の害悪をもたらす霊など),魔術,妖術,聖人や神の怒りなどがあげられる。どの原因が強調されるかは地域差がある。症状の軽い間は家族が薬草を使って治す。それで治らない場合にクランデロが呼ばれる。クランデロは種類が多く,強いて分類すれば,特定の病いの治療に当たる専門技術者と,心理・儀礼的治療を行う者とに大別される。前者には産婆,マッサージ師,卵を身体に塗って病いを治す専門家,病いを吸い取って治す専門家,薬草の専門家,骨つぎ師がいる。後者には村の指導者,古老などがなり,治療と同時に病人の心理を扱い,超自然的なものに呼びかけ,儀礼にたよりつつ治療を行う。このため,ときとして人々に恐れられ,妖術師扱いされる地方もある。クランデロをめぐる習俗について土着の要素とスペイン由来の習俗とを識別することはきわめてむずかしい。以上,メソアメリカを中心にして述べたが,ラテン・アメリカでも黒人の分布する地域(例えばカリブ海,ブラジル)ではアフリカ的治療法が加わる。アメリカ合衆国のメキシコ系およびスペイン系住民にもメソアメリカと類似のクランデロが近年までは機能していた。
→呪医
執筆者:黒田 悦子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報