カリブ海(読み)かりぶかい(英語表記)Caribbean Sea

翻訳|Caribbean Sea

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリブ海」の意味・わかりやすい解説

カリブ海
かりぶかい
Caribbean Sea

北と東を西インド諸島、南を南アメリカ大陸北岸、西を中央アメリカに囲まれる大西洋の付属海。キューバとメキシコの間にあるユカタン海峡によってメキシコ湾に通じ、小アンティル諸島の間の海峡によって大西洋と結ばれ、パナマ運河によって太平洋ともつながる。面積約250万平方キロメートル。コロンビアのマグダレナ川カリブ海に注ぐ最大の川で、ベネズエラマラカイボ湖が最大の湾である。

 地質学的には、ホンジュラス東端とジャマイカハイチを結ぶ線を境にして、南北二つの海盆から形成されている。北部の海盆は、さらに中央を横断するケイマン海膨により北側のユカタン海盆と南側のケイマン海溝に分かれる。このケイマン海溝にカリブ海でいちばん深いバートレット海淵(かいえん)(水深6946メートル)がある。ジャマイカ以南の南部の海盆はコロンビア海盆、ベネズエラ海盆、グレナダ海盆から形成されている。カリブ海の海水は大西洋の海水よりも塩分が少なく、水温も平均24℃である。また、干満の差も30センチメートルで少ない。大西洋の赤道海流が小アンティル諸島の島々の間を通ってカリブ海に入り、北東貿易風によって西側へ流されながら暖められて、ユカタン海峡を通ってメキシコ湾に入り、メキシコ湾流となる。一方、中央アメリカ沿岸では夏になると反時計回りの反流もみられる。カリブ海沿岸と西インド諸島は、一年中北東貿易風の影響でしのぎやすいが、夏から秋にかけて大西洋あるいはカリブ海で発生するハリケーンによって多大の被害を受けることがある。

 カリブ海は1493年コロンブスによってヨーロッパに紹介された。その名称は先住民のカリブに由来する。スペインはこの地域の領有を主張し、1513年太平洋が発見されると、スペイン船隊の主要なルートとなった。スペインが大部分の地域を支配したにもかかわらず、イギリス、フランス、オランダデンマークも小アンティル諸島に植民地を建設した。1848年アメリカ西海岸のゴールド・ラッシュ以降、カリブ海を通ってカリフォルニアに移動する人々が増加し、また1914年のパナマ運河の開通によって、アメリカ合衆国は戦略的に重要なこの地域に強い関心を示すようになった。石油、鉄鉱石ボーキサイト、砂糖、コーヒー、バナナ、ココアなどの産物が海上交通で輸出される。経済的にはアメリカに依存している地域が多い。冬季の保養地として、アメリカ、カナダからの観光客が増加し、国際的な観光地となっている。

[菅野峰明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カリブ海」の意味・わかりやすい解説

カリブ海
カリブかい
Caribbean Sea

大西洋の縁海の一つ。南アメリカ大陸の北岸,中央アメリカの東岸および西インド諸島に囲まれる。北緯9°から 22°までの貿易風帯に位置し,メキシコ湾流の一部はここに端を発する。海嶺や海膨によって楕円形に似た5つの海盆に分けられる。面積は 275万3000km2。最深部は 7686m。平均深度約 2500m。この海域には岩礁や濃霧が少いうえにパナマ運河によって太平洋へも通じるので船舶の往来が多い。沿岸諸地域は一般に山がちであるが港湾は少くない。コロンブスの渡航以来,ヨーロッパ諸国の植民地獲得の拠点となった地域が沿岸に多く,各国の勢力圏は錯綜していた。現在も沿岸には十数ヵ国が相接している。この地域のおもな産物は,従来,砂糖,コーヒー,バナナ,カカオなどの農産物であったが,最近は石油,鉄鉱石,ボーキサイトなどの鉱産物が注目されてきた。

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