改訂新版 世界大百科事典 「クルタナガラ」の意味・わかりやすい解説
クルタナガラ
Kertanagara
生没年:?-1292
インドネシア,ジャワ東部のシンガサリ王国第5代かつ最後の王。在位1268-92年。彼の治世中シンガサリの国威は大いに振るい,ジャワ島の大部分を領し,スマトラ南部のスリウィジャヤに遠征して首都を包囲した。さらにマレーの一部,バリにも遠征軍を送り,東はモルッカ諸島,西はマラッカ海峡に及ぶ海上貿易にも進出した。このころ中国本土を征服していた元朝は,シンガサリの入貢をしばしば促したが,クルタナガラ王は1289年に元の使節に侮辱を与えて追い返し,周辺諸国に対し一致して元軍の来襲に備えるべきことを説いた。92年元軍2万人が船1000隻に乗って泉州を発し,翌年初めにジャワに着いたが,クルタナガラはすでにその前年,クディリの藩王ジャヤカトワンによって暗殺され,シンガサリ朝は滅亡していた。クルタナガラ王についてのジャワ年代記の評価は,彼を聖者とする《ナーガラクルターガマ》と,暴君とする《パララトン》とに分かれる。
執筆者:永積 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報