日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロア・ド・フ」の意味・わかりやすい解説
クロア・ド・フ
くろあどふ
Croix de Feu
戦間期フランスの右翼的政治団体。火の十字団と訳す。1927年に香水王フランソア・コティの援助を受けて発足したころは、第一次世界大戦でクロア・ド・ゲール(戦功十字章)を受勲したエリート在郷軍人の団体であったが、31年ラ・ロックFrançois de La Rocque(1885―1946)中佐が団長となると、青年、婦人なども付属団体に加えて「政党からの超越」を唱えつつ政治的性格を強めた。34年2月のパリ騒擾(そうじょう)事件では、慎重な行動をとったにもかかわらず一躍脚光を浴びた。以後急速に勢力を拡大し、左翼からもっとも危険なファショ団体と目され、皮肉にも人民戦線の形成に間接的に寄与した。36年6月、他の右翼団体とともにブルム人民戦線内閣により解散させられると、ただちにフランス社会党(PSF)と改称し、ビシー政権時代まで存続した。
[平瀬徹也]