左翼(読み)さよく(英語表記)left wing

翻訳|left wing

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

左翼
さよく
left wing

急進主義的な傾向をもつ思想や運動をいう。フランス革命期の国民議会議場で,議長席から左側位置急進派 (ジャコバン党) が議席を設けたところに由来する。左翼思想の特徴は現実変革の可能性に対して楽観主義的な立場を表明することにある。その社会変革の方法には革命を主張する急進的な立場から,現実との接点を重要視する穏健な立場まで多様に存在する。イデオロギー的には社会主義や共産主義を表明する立場を意味していた。現代では東欧,ソ連における共産党政権の崩壊によって穏健な社会民主主義の立場が左翼勢力を代表する位置を占めるようになってきた。

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知恵蔵の解説

左翼

フランス革命の時の国民議会で、急進革命派が議長席から見て左に、穏健派が右に座っていたことが、左翼、右翼という言葉の語源である。時代や国によってそれぞれの中身は異なるが、共通項を挙げれば次のようにまとめることができる。左翼は、理性や啓蒙の子であり、民主主義、平等、人権をこの世で実現しようとする。政治や経済の仕組みは人間の手で作りかえることができるという前提でものを考える。しばしば左翼は革命によって理想の世の中を作り出すことを夢見てきた。右翼は、伝統や人間の感情、情緒を重んじる。長い間定着してきた世の中の仕組みは、多少の弊害があっても、そう簡単に変えられないし、変えるべきでもないと右翼は考える。また、個人よりも共同体の価値を重視する。資本主義の評価をめぐるイデオロギー対立が厳しかった20世紀には、左右の対立は資本主義を倒すべきか否かをめぐるものであった。冷戦構造が崩壊した後は、グローバル資本主義を放置すべきか、これを平等の観点から修正すべきか、というのが左右の対立点である。もっとも、日本での左右対立は、憲法、歴史認識、教育などに関して冷戦時代に左に属したものおよびその継承者を右が攻撃するという形を取っている。

(山口二郎 北海道大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

さ‐よく【左翼】

鳥・飛行機などの左のつばさ。⇔右翼
左右に広がったものの左の方の部分。軍の陣形の左の方。⇔右翼
フランス革命当時、議会で議長席から見て左方に急進派のジャコバン派がいたところから》社会主義共産主義無政府主義などの革新的な思想。また、そのような立場の人・団体。左派。⇔右翼
野球で、本塁から見て左の方の外野。また、そこを守備する人。レフト。⇔右翼

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百科事典マイペディアの解説

左翼【さよく】

広義には右翼と対照的な意味での進歩主義的な立場の人物や団体。狭義には急進的な自由主義社会主義,無政府主義(アナーキズム)などの立場に立つ人物や団体をさす。語源的にはフランス革命当時,国民議会で議長席から見て左側に革命派(ジャコバン・クラブ)が位置したことによる。
→関連項目人民

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世界大百科事典 第2版の解説

さよく【左翼 left wing】

フランス革命時代の国民議会で革命の急進化を主張する一派が議長席から見て左に位置していたことに由来する言葉で,一般に,改革や革命のような政治的志向をする政治勢力や人物のことを指す。具体的に何が〈左翼〉とみなされるかは,その時の政治勢力の位置関係と,対抗概念である〈右翼〉が何を指すかによって決まるといってよい。革命運動や労働運動の内部においても,左派と称されるグループが存在し,また保守派の内部にも左派が存在する。

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大辞林 第三版の解説

さよく【左翼】

鳥・飛行機などの左側のはね・つばさ。
左右に広がっているものの左側の部分。 「敵陣の-を攻撃する」
〔フランス革命時、国民公会で急進派のジャコバン派が議長席から見て左側に座ったことから〕 急進的・革命的な政治勢力や人物。ことに、社会主義的または共産主義的傾向の人や団体。
野球で、本塁から見て外野の左側の部分。また、そこを守る選手。レフト。
▽⇔ 右翼

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

左翼
さよく
left wing

対立概念の右翼と同様、元来、相対的意味しかもたず、その時の政治状況や右翼が何をさすかで決まる。一般に、急進的、革新的、社会主義的、無政府主義的、共産主義的集団ないし人物を意味する。1792年のフランス国民議会で、議長席からみて左側が急進派(ジャコバン派)、中央に中間派、右側に穏健派(ジロンド派)が議席を占めていたことに由来する。世界中で共通に用いられており、わが国では大正中期から翻訳語として(左傾、左派、左党ともいわれた)使われたという。議会内の政党についても、政党内の思想傾向についても、一般に国内外の体制に対する政治態度についても用いられる。1956年の「スターリン批判」以降、共産主義政党に代表される「伝統左翼」「旧左翼」に対し、「新左翼(ニュー・レフト)」という呼称も用いられた。[加藤哲郎]

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精選版 日本国語大辞典の解説

さ‐よく【左翼】

〘名〙
① 鳥や飛行機などの、左の翼。⇔右翼。〔詩経‐小雅・鴛鴦〕
② 左方の軍陣。左方の部隊。左翼隊。⇔右翼。〔和蘭字彙(1855‐58)〕 〔晉書‐慕容廆載記〕
③ 左右に広がったものの左方の部分。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「堂西を正面とす、右翼を上議院(セネート)とし、左翼を下議院(レフレセントチーフ)とす」
④ (一七九二年フランス国民議会で、議長席から見て、左に急進派であるジャコバン党が議席を占めたところから) 一般に社会主義、共産主義、無政府主義など、急進的、革新的傾向をもつ立場、あるいはその人物や団体をいう。左党。左派。⇔右翼
※侏儒の言葉(1923‐27)〈芥川龍之介〉或左傾主義者「彼は最左翼の更に左翼に位してゐた」
⑤ (left field の訳語) 野球で、本塁から見て左側の外野。また、そこを守る外野手左翼手。レフト。〔新式ベースボール術(1898)〕

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世界大百科事典内の左翼の言及

【右と左】より

…左が野党や革新勢力を意味するようになった起源は,1789年に設置されたフランス国民議会にあり,このとき貴族は議長席から見て右側に,平民は左側に席を占め,急進派のジャコバン・クラブなどがそこに含まれていた。この形式が各国の議会でも踏襲され,左翼は野党,その中でも最も左側に急進派が座るようになった。またある時期にはヨーロッパでは共産党が左端に席を連ねたので,マルクス主義者などを〈極左〉と呼んだこともある。…

※「左翼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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