改訂新版 世界大百科事典 「クンチャーンクンペーン」の意味・わかりやすい解説
クンチャーン・クンペーン
Khun Chang Khun Phaen
タイ古典文学中最もタイ的な作品。16世紀アユタヤ朝の対チエンマイ戦勝を祝って作られた伝承物語を,タイ文学第二黄金時代のラーマ2世時代(1809-24)に,王命により王自らをはじめクルー・チェーン,スントーンプー,後のラーマ3世など王宮の大詩人たちが全力を傾注して合作した2万行以上に上る大ロマン。拍子木を叩きながら講釈するセーパー形式の韻文で,ラーマ3世時代(1824-51)に完成した。武芸呪術に長じた眉目秀麗な武人クンペーンと禿頭で容貌醜悪ながら巨富のクンチャーンが,運命にもてあそばれる妖艶な美女ワントーンを奪いあう三角関係を中心に物語は展開する。荒唐無稽な部分もあるが,中世タイの風俗を克明に伝えており,主役が王族でないことも異色。
執筆者:冨田 竹二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報