出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
モンゴル帝国および中国の元朝を扱った紀伝体歴史書。210巻。明(みん)朝初め、1369年、70年の二度編纂(へんさん)された。歴代のハンの治世を記す「本紀」47巻は『十三朝実録』、制度の記録「志」53巻は『経世大典(けいせいたいてん)』、個人の伝記「列伝」97巻は碑文、文集などによって作成された。刊本としては洪武(こうぶ)刻本を影印した百衲本(ひゃくのうぼん)がもっともよい。短時日で編纂されたためか、列伝には重複、疎漏があり、清(しん)代考証学者の悪評はあるが、原資料に忠実に作成され、史料価値は高い。ただ、たとえば、元朝を建てたフビライと政権を争った弟アリク・ブハは、帝位継承の名分があったが、反乱者として記録されるだけであるなど、原資料の偏りを反映した限界も多い。
[松田孝一]
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