改訂新版 世界大百科事典 「グラマー女優」の意味・わかりやすい解説
グラマー女優 (グラマーじょゆう)
容姿が美しく,魅惑的で,とくに性的魅力のあるブロンドの女優を指したハリウッド用語。百万長者をたらしこんで金を巻き上げるコーラスガール(踊り子)たちを主人公にした,アニタ・ルースのユーモア小説《紳士は金髪がお好き》の最初の映画化(マルカム・セイント・クレア監督,ルス・テーラー,アリス・ホワイト主演)が行われた1928年ころから使われ出し,30年代のブロンド女優の〈セックス・アピール〉の代名詞になった。神秘的で,洗練されていて,非現実的な(つまりは露骨ではない)性的魅力を意味し,当時大流行の上流社会のセックス・コメディ(スクリューボール・コメディと呼ばれた)の女優たち,とくに《プラチナ・ブロンド》(1931)のジーン・ハーロー,《生活の設計》(1933)のミリアム・ホプキンズ,《特急二十世紀》(1934)のキャロル・ロンバードらにその典型が見られる。しかしことばそのものは流行語になるとともに風化していき,やがて30年代の〈セクシーな〉女優の大半が安易に〈グラマーガールglamour girl〉の名で呼ばれるに至り(その中には〈ベビー・バンプ〉とも呼ばれたメエ・ウェストもいた),また,38年には,ファッションの世界でも〈ベスト・ドレッサー〉の代名詞として使われるようになり,ブレンダ・フレーザーという黒髪の美女に〈グラマーガール〉のニックネームが付されて話題を呼んだ。戦後はグラマーということばの本来の意味がすっかりすたれ,ハリウッドでは,ときには〈知的なブロンド美女〉としてグレース・ケリーに〈グラマラス〉という形容詞が使われる一方,〈豊満な肉体のブロンド美女〉としてマリリン・モンローに〈グラマー〉の名が冠せられたりした。
執筆者:柏倉 昌美+広岡 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報