日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケミカルガーデン」の意味・わかりやすい解説
ケミカルガーデン
けみかるがーでん
chemical garden
浸透現象を応用した実験。その方法は、まず水ガラス(ケイ酸ナトリウム)をほぼ等量の純水で希釈してガラス容器に入れる。比重が1.10ぐらいとなるのがよい。ケイ酸ナトリウムはやがて加水分解をおこして、ケイ酸のゲルとなる。硫酸コバルトや塩化クロムなどの色鮮やかな結晶片(マッチの頭大から豆粒ほどのもの)を底に投入すると、金属塩の結晶は初め水に溶解して濃厚な溶液となる。しかしこれらの金属のケイ酸塩はおおむね水に不溶であるために、表面にはケイ酸塩の膜ができる。この薄い膜は半透膜としての性質があるので、浸透圧の差のために溶媒の水が薄膜の内部に浸入して、濃厚な金属塩溶液を希釈しようとする。水の圧力は底のほうほど大きいので膜の上端が破れるが、やがてふたたびケイ酸塩の膜が生成して同じことが繰り返される。有色のケイ酸塩のサンゴのような樹枝が上方に成長してゆくことになる。これをケミカルガーデン(化学の花園)という。種々の金属塩を用いると、各イオンに特有の色彩をもったものがつくれるので、展示などに用いられる。
[山崎 昶]
『L・A・フォード著、金沢養訳『化学マジック』(1960・白揚社)』