コバルト化合物(読み)コバルトカゴウブツ

化学辞典 第2版 「コバルト化合物」の解説

コバルト化合物
コバルトカゴウブツ
cobalt compound

コバルト酸化数-1~5で化合物をつくるが,単純な塩では Co錯体では Coが安定である.酸化数0のコバルトは[Co2(CO)8],[Co4(CO)12]や [Co2(CN)8]8- で表されるシアノ錯イオンなどが知られている.Co0 の電子配置が d7 であるため,Co(CO)4は不対電子をもつラジカルであるからCo-Co結合をつくらないと安定化しない.[Co2(CO)8]は融点51 ℃ の橙赤色の固体で,ベンゼン中でNaアマルガムで還元すると [Co-Ⅰ(CO)4] が得られる.Co錯体はホスフィン [Co(PMe3)4],[Co(PMe3)3Cl],ホスファイトエステル [Co{P(OMe)3}4](Me = メチル基(CH3))など,Pを含む配位子とするものが多い.【】コバルト(Ⅱ)化合物:酸化物,水酸化物,塩化物,硫化物,硝酸塩硫酸塩酢酸塩などがあるが,多くは水和物である.一般に無水塩は青色で,水和物や水溶液は淡紅色を示す.514 nm に吸収ピークをもつ [Co(H2O)6]2+ が存在するためである.水和物は加熱すると段階的に配位水を失って変色する.赤色のCoCl2・6H2Oは55 ℃ でCoCl2・2H2O,90 ℃ でCoCl2・H2O,130 ℃ で青色の無水塩となるので,シリカゲルの吸湿能力指示に利用される.[Co(H2O)6]2+ は酸化困難であるが,アンモニア,ハロゲン化物イオン,シアン化物イオンなどが存在する錯イオンを生成し,容易に Co錯イオンに酸化される.Co錯体は,四配位(四面体型構造)または六配位(八面体型構造),d7 電子配置で高スピンのものが多い.【】コバルト(Ⅲ)化合物:単純な塩は一般に不安定で,フッ化物,硝酸塩,硫酸塩,ミョウバンMCo (SO4)2・2H2O(M = K,Rb,Cs,NH4)が得られているが,Coに還元されやすい.しかし Coの錯体は,荷電数の高い中心金属 Coによって配位結合が安定化するため([別用語参照]結晶場安定化エネルギー),多数存在する.Co錯体は色,構造,安定性,化学的性質などで多様性を示す.とくにアンミン錯塩は,[Co(NH3)6]3+,[Co(NH3)5H2O]3+,[Co(NH3)5X]2+(X = Cl,Br,NO2),cis-,trans-[Co(NH3)4X2](X = Cl,NO2)など古くから広範囲に合成され,A. Werner(ウェルナー)の先駆的研究以来,研究対象として錯体化学の発展に大きな影響を残した.Coは典型的な硬イオン([別用語参照]HSAB原理)で,N,Oを配位原子とする配位子とよく錯体をつくるが,S,As,ハロゲンをもつ配位子とも結合する.Co錯体は d6 電子配置で低スピンの六配位・八面体型構造,反磁性のものが多い.【】酸化数4以上の化合物は少ないが,例として CoのCs2[CoF6],CoのK3CoO4などがある.コバルトは,生体中にはおもにビタミン B12 中に含まれている.コバルト化合物はPRTR法・第一種指定・発がんクラス2(ヒトに対する発がん性の疑いが高い),作業環境クラス2,感作性クラス1.大気汚染防止法 有害大気汚染物質.労働安全法・名称等を通知すべき危険物及び有害物.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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