コンバーチブル・プレーン(読み)こんばーちぶるぷれーん(その他表記)convertible plane

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

コンバーチブル・プレーン
こんばーちぶるぷれーん
convertible plane

飛行中に一つの形式の航空機からまったく違った形式の航空機に変えることができる航空機で、おもに回転翼機と固定翼機の両方の形式を飛行中に転換できる航空機をいう。転換式航空機、早変り航空機、コンバーチプレーンconvertiplane、コンバータプレーンconvertaplaneなどともよばれる。

 垂直離着陸のできるヘリコプターは、飛行速度と回転翼の回転速度の関係から最大速度が低く、また回転翼で生じる揚力の水平分力で運動するので効率が悪い。固定翼機は、高速飛行には翼面積は小さくてもよいが離着陸距離が長くなるので、離着陸のためだけに大きな面積の翼を取り付けて空気抵抗を増していることになる。そこで離着陸時には回転翼を用い、巡航時は前進用の動力装置と揚力を得るのに最低限度の固定翼を用いて、それぞれの欠点を補い合えば、航空機の利用価値をさらに高めることができるというのがその発想である。

 コンバーチブル・プレーンには次のような形式がある。

(1)前進飛行に入ると回転翼のピッチをゼロにして自由回転させ、別に備えた前進用のエンジンと固定翼の揚力で飛行する、複合ヘリコプターともいえる形式。

(2)前記と同じ形式であるが、前進飛行中は不要になった回転翼を、折り畳んだり胴体内に引っ込めたりして空気抵抗を減少する形式。

(3)回転翼の面積を大きめにしておき、前進飛行中は回転翼をそのまま固定翼として使用する形式。

(4)回転翼を、それを取り付けた翼ごと、あるいは軸ごと前進方向に傾けて水平飛行にも使用するティルト・ローター方式。

 しかし、(1)の複合ヘリコプター型を除いては、垂直飛行から水平飛行への転換中のエンジン・ストップに対する安全性の確保に問題があったり、どの形式もどちらの機種にも徹しない中途半端な性能、複雑な構造による重量増加故障の際の安全性の確保などに未解決の点が多く、まだ実用化されたものはない。

[落合一夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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