翻訳|failure
対象に要求されている機能が失われることをいう。故障は,いろいろな使用環境にともなう物理的,化学的,機械的,電気的ストレスあるいは人間的原因などによりひき起こされるが,この仕組みを故障メカニズムといい,その結果発生する故障状態の形式,たとえば動作不能,断線,折損などの症状の区別を故障モードという。信頼性工学においては,信頼性や保全性に関する数量的尺度を信頼性特性値と呼んでいる。このなかには,信頼度reliability(信頼性)のほか,保全性に対する保全度maintainabilityがある。これは,対象に故障が発生したとき,ある規定の期間内(たとえば1時間以内)に修復を完了する確率である。信頼度では故障の発生が問題になり,保全度では故障の修復が問題になる。信頼度や保全度は確率であるが,その時間当りの発生率(修復率)や故障発生(故障回復)までの時間の長さで測るほうが実際的である。これらの特性値を以下に説明する。
(1)故障率failure rate 人間の寿命を測る尺度として死亡率がよく使用される。故障率は,人間の死亡のかわりに対象の故障を考えたもので,死亡率が年齢に依存するように故障率も使用期間の長さに依存している。ある年齢tでの故障率は,その年齢に達した対象n(t)個を短い期間⊿t使用したときにn(t)個中r個故障すれば,r/(n(t)・⊿t)として求められる。たとえば使い始めて1年後の製品100個を1月使用して1個故障すれば,その1月の故障率は1/(100×1月)=1%と計算される。人間の死亡率を年齢に対して図にしてみると洋式の浴槽の形になり,この曲線をバスタブ曲線bath-tub curveという(図参照)。この曲線は,三つの時期,すなわち死亡率が減少する幼児死亡期,ほぼ一定の成人期,老化で上昇する老人期の三つからなっている。信頼性の対象となる製品やシステムの故障率が人間の死亡率と同じになるべき理由はないが,同じような傾向を示すと想定してこの三つの時期をそれぞれ初期故障期間,偶発故障期間,摩耗故障期間と呼んでいる。初期故障期は潜在していた設計や製造の欠陥や使用環境との不適合部分などが,使い初めの時期に故障となって表れる時期である。偶発故障期は,初期故障が出つくして偶発的な故障のみが残り,製品のもっとも働きざかりの時期で故障率はほぼ一定となる。摩耗故障期では対象の本質的な老化が進行し寿命がつき,急激に故障率が上昇する。なお,信頼度に対する故障率と対比して,保全度に対しては修復率が使用される。
(2)平均故障寿命mean time to failure 略称MTTF。修理困難な製品や修理を行わない消耗品(部品,材料など)では,故障が発生すればそこで寿命がつきる。この故障するまでの時間平均をMTTFという。人間でいえば平均寿命である。
(3)平均故障間隔mean time between failures 略称MTBF。これはテレビ,自動車,コンピューターなど故障しても修理しながら使用する製品の尺度で,故障が修復されてふたたび使用され,次にまた故障が起こるまでの時間間隔の平均をいう。人間でいえば,病気回復から次の発病までの期間の平均がMTBFで,その人の健康度(信頼度)の尺度となっている。
(4)平均修理時間mean time to repair 略称MTTR。保全性の尺度で,故障発生から故障回復までの時間の平均であり,これが短いほど保全性すなわち修復能力が高いことになる。
執筆者:塩見 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…固体材料が,外力の作用のもとに二つ,またはそれ以上の部分に分離する現象をいう。このときの応力(単位断面積当りの荷重),すなわち破壊応力を破壊強さ,または破壊強度という。とくに平滑材料を引張り,あるいは曲げ変形した場合の破壊強さを,それぞれ引張強さ,曲げ強さと呼び,破壊を取り扱うもっとも基本的な値となる。 破壊現象は,材料自身の特性,負荷の条件および化学的環境により,さまざまな形態に分類することができるが,原子レベルで見れば,原子間結合がへき開,またはせん断(すべり)により分断される現象である。…
※「故障」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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