日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴルドマン」の意味・わかりやすい解説
ゴルドマン
ごるどまん
Lucien Goldmann
(1913―1970)
ルーマニア出身のフランスの思想史家、哲学者。ブカレスト、パリ、チューリヒなどで法学、文学、哲学を修めたのち、フランス国立科学研究所の研究員を経て高等研究院の教授となる。哲学史や文学史の研究における文献的、伝記的考証の重視を克服するために「世界観」という方法概念を導入し、その具体化として、17世紀ジャンセニスムの「悲劇的世界観」とパスカル、ラシーヌの作品との構造的対応性を検証する。また、初期のG・ルカーチの弁証法思想を近代哲学史上の画期をなすものととらえつつ、彼の方法を人間科学の諸領域に生かすべく「精神の社会学」sociologie de l'espritを構想する。フランスの知的世界にルカーチ思想を初めて本格的に紹介し、自らも実存主義と構造主義との対抗を超える哲学的営為を続けた。主要著作に『隠れたる神』(1956)、『弁証法論考』(1959)、『ルカーチとハイデッガー』(1973)などがある。
[安孫子誠男 2015年5月19日]
『L・ゴルドマン著、川俣晃自訳『人間科学の弁証法』(1971・イザラ書房)』▽『山形頼洋・名田丈夫訳『隠れたる神』上下(1972、1973・社会思想社)』▽『川俣晃自訳『ルカーチとハイデガー――新しい哲学のために』(1976・法政大学出版局)』