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弁証法 べんしょうほう dialectic; Dialektik

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

弁証法
べんしょうほう
dialectic; Dialektik

ギリシア語の dialektikē technēに由来し,対話術,問答術を意味する。アリストテレスによれば,エレアゼノン弁証法の創始者とされるが,彼は「多」と「運動」の実在性を主張する論理の矛盾を一種の帰謬法によって明らかにした。

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デジタル大辞泉の解説

べんしょう‐ほう〔‐ハフ〕【弁証法】

《〈ギリシャdialektikē/〈ドイツ〉Dialektik》対話・弁論の技術の意。ソクラテスプラトンでは、事物の本質を概念的に把握するための方法とされ、アリストテレスでは、真の命題からの論証的推理から区別され、確からしい前提からの推論を意味した。カントは、理性が不可避的に陥る錯覚として、仮象の論理の意に用いた。ヘーゲルは、思考と存在を貫く運動・発展の論理ととらえたが、その本質は思考(概念)の自己展開にある。概念が自己内に含む矛盾を止揚して高次の段階へ至るという論理構造は、一般には正・反・合定立・反定立・総合という三段階で説明されている。また、マルクスエンゲルスは、唯物論の立場から、自然・社会・歴史の運動・発展の論理ととらえた。

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百科事典マイペディアの解説

弁証法【べんしょうほう】

英語dialectic,ドイツ語Dialektikなどの訳。欧語はギリシア語ディアレクティケに由来する言葉で,元来〈対話・弁論の技術〉の意。エレアのゼノンにこのような技術の祖を認め,ソクラテスプラトン,アリストテレスの〈弁証法〉が語られるが,もっぱら対話・問答によって哲学という営為がなされた古代に,ヘーゲル以後の特殊な意味を担う語を用いることは適当でなく,ヘーゲル以前については〈対話術〉〈問答法〉〈弁証論〉などの訳語を用いるのが望ましい
→関連項目三浦梅園

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世界大百科事典 第2版の解説

べんしょうほう【弁証法 dialectic】

弁証法とは,元来は対話術(ギリシア語でdialektikē technē)を表すことばであり,仮設的命題から出発しつつ,その仮設からの帰結にもとづいて,当の仮設的命題自身の当否を吟味する論理的手法を意味する。パラドックスで有名なエレアのゼノンがこの手法の元祖といわれる。ソクラテスの問答的対話術を承けたプラトンにおいては,公理的前提から出発する幾何学などの悟性知の論理と区別して,弁証法こそが哲学的な真知学の方法とされる。

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大辞林 第三版の解説

べんしょうほう【弁証法】

古代ギリシャで、対話などを通して事物の真の認識とイデアに到達する、ソクラテス・プラトンにみられる仮説演繹的方法(問答法)をいう。アリストテレスでは、確からしいが真理とはいえない命題を前提とする推理をさし、真なる学問的論証と区別される。
カントでは、経験による裏付けのない不確実な推理を意味し、それを純粋理性の誤用に基づく仮象の論理学ととらえる。
矛盾を含む否定性に積極的意味を見いだすヘーゲルでは、有限なものが自己自身のうちに自己との対立・矛盾を生み出し、それを止揚することで高次なものへ発展する思考および存在を貫く運動の論理をさす。それは思考と存在との根源的な同一性であるイデーの自己展開ととらえられる。ヘーゲル弁証法。
マルクス・エンゲルスでは、イデーを展開の主体とするヘーゲル弁証法の観念論を批判し、自然・社会および思惟の一般的運動法則についての科学とした。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

弁証法
べんしょうほう
dialectic英語
Dialektikドイツ語
dialectiqueフランス語

一つの物事を対立した二つの規定の統一としてとらえる方法。だが、弁証法の語源にあたるギリシア語の「ディアレクティケーdialektik」は「問答法の」という意味の形容詞であるから、名詞を補うと、「ディアレクティケー・メトドス」(『国家』533c7)、もしくは「ディアレクティケー・エピステーメー」(『ソピステス』253c2-3)となる。ディアレクティケーは、プラトンによると、問答によって、「それぞれのものがまさにそれであるところのもの」へと迫り、ついにはものの第一原理、善そのものを知性の働きによって直接に把握しようとする探究の行程(メトドス)、言論の旅路(ポレイアー)であって、これこそ最高の学問(エピステーメー)である(『国家』592a以下)。
 プロティノスは「ディアレクティケー」を「それぞれのものが何であり、いかなる点で他と異なっているのか、そして共通点は何であるのかをことばでもって表すことのできるわざである」と定義して、「上方の世界に導かれるにふさわしい人は、(1)知を愛し求める人、(2)美しい音色を好む人(音楽・文芸の教養のある人)、(3)愛に生きる人でなければならぬ。この3種の人に、感性界から知性界への旅路と、知性界から、そのはてへの旅路という2段階の旅路がある。ディアレクティケーは、われわれを〈善〉、〈第一原理〉へと導く道程である」と述べている。
 ソクラテスの問答法は、特定の相手との問答を通して「ものの何であるか」を考察するものであるが、それはほとんどの場合、まったくの否定に終わってしまった。ヘーゲルは、懐疑主義思想の研究を通じて、その否定のなかにひそむ肯定の契機が出てくるとみなして、弁証法を一つの物事を対立した二つの規定の統一としてとらえる方法という緩やかな意味で用いた。
 その対立の統一・矛盾を真かつ必然とみなすか、偶然かつ仮象とみなすか。運動の存在を主張することに含まれる「アキレスと亀(かめ)」のような矛盾を指摘して、運動、変化、多様の存在を否認したゼノンはアリストテレスによって弁証法の父とみなされた。しかしゼノンの論理を認めて、なおかつ運動の存在を認める者は、「運動が矛盾の実在を証明している」と主張する。「万物は流転する」と語ったと多くの人がみなしてきたヘラクレイトスは、「人は同じ川に二度入ることができない」という。彼によれば、宇宙は絶えず消えつつ燃えている火のようなものである。静止して存続している物も、実際には二つの対立する力が均衡している不安定な状態である。近代においても、ヘーゲルは、存在を、絶えず新陳代謝によって、自己を外界に分解させながら、同時に自己を再生産し、同一を維持することだと把握している。対立する力の均衡という本質が、静止した存続という現象を支えている。
 前述のように「ディアレクティケー」は、「問答法の」という意味であり、プラトンの著作では、ソクラテスの批判に応答しながら、真理に到達する方法、否定を通じて精神が真理にまで高まる過程が弁証法である。否定を通じて高揚する精神は同一の精神である。
 ヘーゲルによれば、精神に限らず、発展・成長・変化するものには、「他となりつつ同一を保つ」という「対立の統一」が含まれている。発展・変化の限界点では違うものが同じものである。この限界の矛盾性が、数学においては微分に表現される極限点に成立する。グラフ上接点で示される極限点では、曲線が直線に等しい。微分の弁証法的な解釈には、「点の本質的な規定として隣接点との関係が含まれる」という原理がある。もの一般にこの原理を拡張すると、「あるものの本性には他のものとの異なり等の関係が内在する」となる。これは、「関係は実体と同様に実在する」といっても同じことである。ここからさらに、「内的な本質とは多様な関係の集約である」という規定を導き出すと、問題は内なるものと外なるものとの関係という構造に射映される。
 ヘーゲルは、同一の構造を心の内省のうちにもみいだす。心がその心を意識するとき、意識する心と意識される心とは、同一であって、しかも同一ではない。主観としての心と客観としての心が同一であるからこそ、外部の媒介を経ない直接の知が成り立つ。たとえば、山を見る私は自分が「山を見ている」ということを知っており、「見る」という意識活動を意識する反省意識は見る意識と同時に働く、同一の意識である。しかし、知る主体と知られる客体という作用面での区別がある。したがって、内省・反省のうちには「区別のない区別」という対立者の同一が含まれる。
 内なるものと外なるもの、本質と現象、一なるイデアと多なる個物、意味するものと意味されるもの、主観と客観は、内省・「自己意識」の構造を媒介として統一される。ヘーゲルは、新プラトン派の説く「イデアの流出」や、キリスト教的な「受肉」の概念をこれによって合理化する。その結果として生まれる「ものの把握」(概念)には、本質という普遍、「このもの」という個別、本質が個別化されているという媒介関係そのもの(特殊)が含まれている。これを要約すると、「ものとは推論(普遍、特殊、個別の総合)である」となる。ヘーゲルは、「三要素の一体」という新プラトン派の観念を、キリスト教の「三位(さんみ)一体」に重ね合わせ、近代汎神論(はんしんろん)の土台の上に据え直す。
 従来、ヘーゲルの弁証法を定立(テーゼ)、反定立(アンチテーゼ)、総合(ジンテーゼ)の三段階(略して正・反・合)で構成される論理であるという説明が行われてきたが、この語法はヘーゲルのテキスト中にはない。フィヒテの用語を援用してヘーゲル弁証法を説明したものである。
 ヘーゲルの弁証法では、数の連続体における限界の弁証法、等質性の弁証法と内と外の弁証法、非等質性の弁証法が重ね合わせになっているが、キルケゴールの「質的弁証法」では、非等質性のなかに逆説的なものが導入されてくる。たとえば、「イエスと自己との2000年を隔てた同時性」という概念がある。K・バルトの「弁証法神学」には、神人の絶対的な断絶のさなかにおける存在の同一という思想がある。キルケゴール、バルトでは、連続性・等質性を拒否した断絶における逆説的な媒介が、弁証法の概念を形づくっている。
 マルクス主義では、認識以前の物質の構造が精神に反映されて、弁証法の構造となると主張される。自己意識の内省構造の弁証法性を否認して、「関係の実在性」という存在論的な規定として弁証法がとらえられる。[加藤尚武]
『小林登著『弁証法』(1977・青木書店) ▽R・ブプナー著、加藤尚武・伊坂青司・竹田純郎訳『弁証法と科学』(1983・未来社) ▽ヘーゲル著、寺沢恒信訳『大論理学』(1983・以文社) ▽中埜肇編『ヘーゲル哲学研究』(1986・理想社) ▽茅野良男著『弁証法入門』(講談社現代新書)』

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世界大百科事典内の弁証法の言及

【ゼノン】より

…ローマ帝国皇帝,ビザンティン帝国皇帝。在位474‐475,476‐491年。426年生れともいわれる。前名タラシコディッサTarasikodissa。イサウリア族族長でレオ1世の要請でアスパルに代表されるゲルマン勢力に対抗するために宮廷に招かれる。皇女アリアドネと結婚しゼノンを名のる(466)。レオ1世の没後(474),7歳の息子がレオ2世として登位するが,彼が同年没したため正帝となる。475年先帝の義弟バシリスクスに帝位を奪われるが,翌年復帰し,同年西の正帝ロムルス・アウグストゥルスが没したあと,ローマ帝国唯一の皇帝となる。…

【ヘーゲル】より

…そして第2の主著《論理学》(1812‐16)が出される。
[弁証法と国家論]
 ヘーゲルは《論理学》でカテゴリーに関するカントの学説を超えようとする。あらゆる事物には,カテゴリーの形式が内在する。…

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