改訂新版 世界大百科事典 「サンギラン」の意味・わかりやすい解説
サンギラン
Sangiran
インドネシア,中部ジャワのスラカルタSurakarta市の北方12km,サンギラン村を中心とする更新世人類遺跡。この付近一帯は,東西4km南北8kmにわたって,鮮新世以降の平坦な地層が泥火山によってもち上げられ,全体がドーム状に変形し,同時に浸食が進んだので,タマネギを輪切りにしたように,中心ほど古く周辺ほど新しい地層が露出している。そのため,1936年にG.H.R.vonケーニヒスワルトが最初に発見して以来,40点以上のピテカントロプスあるいはメガントロプスと呼ばれた化石人骨が発見されている。今では,これらの化石はホモ・エレクトスとしてまとめられている。人類化石を含む堆積層はサンギラン(プッチャンガン)層(約160万~90万年前)とバパン(カブー)層(約90万~70万年前)であり,バパン層の最下部はグレンツバンク層と呼ばれる。サンギラン層からは頭骨数点(S 22,27など),グレンツバンク層からは頭骨数点(S 2,4など),バパン層からも頭骨数点(S 12,17,IXなど)が発見されている。とくにS 17頭骨とIX頭骨(Skull IXと呼ばれる化石)は顔面も保存されているので,ジャワにおける人類進化の解明に重要である。頭蓋腔容積(脳容積より10%ほど大きい)は変異があり,820~1000mlと推定されている,化石の年代は,大部分の化石が地元住民によって発見されているので正確な編年が困難だが,フィッション・トラック法や古地磁気法により,およそ120万~70万年前と推定されている。石器は小型の剥片が発見されているが,定型的なものが少なく,研究は進んでいない。
→ガンドン →サンブンマチャン →ジャワ原人 →ホモ・エレクトス
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報