ジャワ原人(読み)ジャワゲンジン(その他表記)Java man

翻訳|Java man

デジタル大辞泉 「ジャワ原人」の意味・読み・例文・類語

ジャワ‐げんじん【ジャワ原人】

1891年にインドネシアジャワ島トリニールで発見された化石人類更新世中期に生存し、脳容積現代人の約3分の2。直立歩行し、眼窩がんか上にひさし状の隆起がある。ピテカントロプス‐エレクトゥス(直立猿人)として分類されたが、現在はホモ‐エレクトゥスに含め、原人とされる。

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精選版 日本国語大辞典 「ジャワ原人」の意味・読み・例文・類語

ジャワ‐げんじん【ジャワ原人】

  1. 〘 名詞 〙 およそ五〇万年前から三〇万年前に生存していたと思われる化石人類。一八九一年、オランダ人デュボアによりジャワ島中部のトリニールの洪積世地層から頭骨が発見され、ピテカントロプス‐エレクトゥス(直立猿人)の学名がつけられたが、現在ではピテカントロプスの属名はほとんど用いられない。同じく北京の周口店で発見された北京原人シナントロプス‐ペキネンシス)とともに原人の名で呼ばれる。ジャワ猿人

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改訂新版 世界大百科事典 「ジャワ原人」の意味・わかりやすい解説

ジャワ原人 (ジャワげんじん)
Java man

オランダの解剖学者デュボアE.Duboisが,1891-93年にインドネシアのジャワ島にあるトリニールTrinil村のソロ河の河岸で,頭骨,大腿骨,歯を発掘し,ピテカントロプス・エレクトスPithecanthropus erectus(直立するサル人間という意味)と命名した原人の通称。今日では,ホモ・エレクトスHomo erectusに含まれる。ホモ・エレクトスの模式標本は,この頭骨(Trinil 2)。ヒトがサルの仲間から進化したというダーウィン進化論を,サルとヒトの中間状態を示す化石の発見により実際に証明したという歴史的な意義も大きい。年代は120万年前から12万年前,あるいは4万年前と推定されている。トリニール以外にも,サンギランSangiranでは120万~70万年前,サンブンマチャンSambungmacanでは約30万年前,ガンドンNgandongとガウイNgawiでは15万~4万年前,プルニンPerning(モジョケルトModjokerto)では100万年前(180万年前という報告もある)と推定される化石が見つかっている。

 ジャワ原人化石の調査は,デュボア以来,オランダ人のオッペンノールトW.F.F.OppennoorthやケーニヒスワルトG.H.R.von Koenigswaldによってなされてきたが,第2次大戦後は,インドネシア人研究者が主導し,ガジャマダ大学のヤコブT.Jacobとバンドン工科大学のサルトノS.Sartonoが中心となっていた。1975年から東京大学の渡邊直經がバンドン地質研究開発センターとの共同調査を進め,とくにジャワ原人化石包含層の同定と年代学的研究が発展した。その共同調査は,1990年代からバンドン地質研究開発センターのアジズF.Aziz,国立科学博物館の馬場悠男と海部陽介,お茶の水女子大学の松浦秀治と近藤恵たちに受け継がれ,化石の発見・研究や年代の推定に関する成果をあげている。
ガンドン →サンギラン →サンブンマチャン →ソロ人 →トリニール →ホモ・エレクトス
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャワ原人」の意味・わかりやすい解説

ジャワ原人
ジャワげんじん
Java man

インドネシアのジャワ島で出土した化石人類。かつてはピテカントロプスの属名を与えられていたが,今日ではホモ・エレクトゥス・エレクトゥス Homo erectus erectus と三名法で表記され,原人類に属する。生存年代は約 100万~50万年前。中部ジャワ,トリニールの更新世中期の層から,1891~92年ウジェーヌ・F.T.デュボアによって発見され,その後もジャワ島中部のモジョケルト(→モジョケルト頭骨)やサンギラン(→サンギラン遺跡)などからグスタフ・H.R.フォン・ケーニヒスワルトや T.ヤコブにより発見された。1969年には,待望の顔面が保存されている頭骨がサルトノ・カルトディルジョにより発見された。これは 8番目のものである。1997年には日本とインドネシアの合同調査隊がサンギランで,約 80万年前の地層から子供の下顎の前歯 1本を発掘した。

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知恵蔵 「ジャワ原人」の解説

ジャワ原人

ジャワ原人は1891年以来、インドネシアのジャワ島で発見されピテカントロプス・エレクトス(Pithecanthropus erectus)と命名された原人の通称。北京原人は1923年以来、中国の北京郊外の周口店で発見されシナントロプス・ペキネンシス(Sinanthropus pekinensis)と命名された原人の通称。両者ともホモ・エレクトスとしてまとめられている。ヒトがサルの仲間から進化したというダーウィンの進化論を、サルとヒトの中間状態を示す化石の発見により実際に証明した、という歴史的な意義が大きい。

(馬場悠男 国立科学博物館人類研究部長 / 2007年)

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旺文社世界史事典 三訂版 「ジャワ原人」の解説

ジャワ原人
ジャワげんじん
Pithecanthropus Erectus

原人の一種。直立猿人,ピテカントロプス−エレクトゥス
1891〜92年オランダ人デュボアがジャワのトリニールで発見。更新世中期の初め(約50万年前)に生存し,頭蓋 (とうがい) 骨・大腿 (だいたい) 骨・歯などの化石からみて脳の容積は850ccくらいで,現代人の約3分の2,類人猿と人類の中間的特徴をもつ。

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世界大百科事典(旧版)内のジャワ原人の言及

【ピテカントロプス】より

…ドイツの生物学者E.ヘッケルがいつか発見されるはずの人類の祖先の呼名として提唱し,のちにオランダの解剖学者E.デュボアがインドネシアのジャワ島で実際に発見した化石人類に与えた名称。ジャワ原人と訳される。ピテカントロプスの発見は,ジャワ島中央部を流れるソロ川沿岸のトリニールTrinilで,1891年から翌年にかけてデュボアが頭蓋冠と歯と大腿骨の化石を発掘したのに始まる。…

※「ジャワ原人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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