株式相場などの急変動に際し、取引所が強制的に取引を一定時間停止する制度。投資家保護が目的で、取引を停止することで投資家が冷静になるのを待ち、市場の価格形成機能が麻痺(まひ)するのを防ぐねらいがある。電気回路(サーキット)に過剰な電気が流れて焼き切れるのを防ぐため、強制的に電気を止める遮断機(ブレーカー)に似ているため、こうよばれる。日本では「緊急取引停止措置」などといわれることもある。1987年のブラック・マンデーの株価暴落を教訓に、ニューヨーク証券取引所で導入されたのが最初である。現在では、日本、アメリカ、ヨーロッパ、韓国などの株式、債券、商品市場などで先物(さきもの)取引を中心に一般的に導入されている。各国の取引所によって制度の中身は異なるが、前営業日の終値からの一定の変動幅や、現物価格から計算した先物の理論価格との乖離(かいり)率などを基準に発動する事例が多い。また、前営業日終値比5%の変動幅を超えた場合に1時間取引を停止し、さらに再開後、同10%の変動幅を超えた場合に終日取引停止とするなど、2段階で制限を設ける国もある。
かつては、アメリカ同時多発テロ翌日(2001年9月12日)など、経済に深刻な影響を与える事態が起きたとき以外はサーキット・ブレーカーが発動されるのはまれであったが、2008年のリーマン・ショック以降は、世界で株式のほか原油、金などの市場で発動される事例が増えている。サーキット・ブレーカー制度は急激な相場変動を回避できる利点がある一方、投資家にとっては売買したいときに売買できない流動性リスクがあり、市場原理に基づく価格形成をゆがめるおそれがあるとの批判もある。
日本では、日経平均先物や債券先物などを対象に1994年(平成6)に導入された。先物取引やオプション取引で機能しているが、現物株取引には導入されていない。中国では、2015年夏の上海(シャンハイ)株急落を教訓に、2016年1月4日から代表的な株式指数「CSI300」に導入されたが、1月4日、7日と連続で発動されて市場の混乱を招いたため、1月8日にサーキット・ブレーカー制度自体を停止した。
[矢野 武 2016年8月19日]
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