翻訳|option
一般には選択、選択権などを意味し、証券市場では選択権付き取引をさす。買付け(あるいは売付け)の選択権の買い手は契約内容に従い、一定期間内に契約時の価格で株式を売り付ける権利(買い付ける権利)を取得することができるが、その選択権の売買に関する取引をさす。大別してプット・オプションput optionとコール・オプションcall optionがある。前者を売付け選択権といい、その買い手は一定期間内にいつでも、プット・オプションの売り手に契約価格で特定数量の株式を売り付ける権利があり、売り手は権利が行使された場合、いつでもそれに応じなければならない。コール・オプションはその逆で買付け選択権のことである。プットとコールとの組合せにより、ダブル・オプション、ストラッドル、スプレッドなどの変形された内容のオプションがある。たとえば、売り手である投資家Aが10ドルの株100株を、6か月以内なら15ドルの株価で売り渡すという権利(オプション)を100ドルで売る。期間内に株価が20ドルになったとすると、オプションの買い手BはAから株を買って市場で売れば
(20×100)-(15×100)-100=400(ドル)の利益となる。逆に5ドルに下がった場合、買い手Bは権利を放棄すれば100ドルの損ですむ。売り手Aにとっては本来500ドルの損であるが、400ドルの損ですむから、売り手、買い手ともにリスクを小さくする効果がある。オプションは投機やヘッジ(つなぎ売買)の目的で用いられるが、その起源は古く、アリストテレスによれば、ギリシアの哲学者タレスがオリーブ圧搾機のオプション契約を行ったとされる。ただ、体系的なオプション取引としては、17世紀のオランダにおけるチューリップの球根取引のリスクヘッジが最初といわれる。アメリカでは1973年にシカゴ・オプション取引所で証券(ストック)オプションが成功したことによってその後発展してきた。日本では1989年(平成1)以降、債券、株式などを対象としたオプション取引制度が相次いで導入され、さまざまな投資戦略を実現する道が開かれている。
貿易契約では、当事者の一方が、いくつかの事項について、そのうちの一つを自由に選ぶ権利(選択権)をもつ場合をセラーズ・オプションseller's optionといい、買い手の場合をバイヤーズ・オプションbuyer's optionという。なお、「オプション」は選択自由な特別注文という意味で、航空機の仮発注や、ファッション、自動車などの注文についても用いられている。
[桶田 篤・高橋 元]
『国村道雄、飯原慶雄著『株式市場とオプション取引』(1989・中央経済社)』▽『日本銀行金融市場研究会編著『オプション取引のすべて――デリバティブズとリスク管理』(1995・金融財政事情研究会)』▽『シカゴオプション取引所付属オプション専門学校編、可児滋訳『オプション――その基本と取引戦略』(1999・ときわ総合サービス株式会社出版調査部)』▽『ジョン・C・ハル著、小林孝雄監訳『先物・オプション取引入門』(2001・ビアソン・エデュケーション)』
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