改訂新版 世界大百科事典 「ザーヒル派」の意味・わかりやすい解説
ザーヒル派 (ザーヒルは)
Ẓāhir
法学者ダーウード・アッザーヒリーのもとに集まった弟子たちにより,バグダードに創始されたスンナ派イスラムの法学派。最初のうち,ダーウードDā`ūd派とも呼ばれていた。法源(ウスール)としてキヤース(類推)を認めず,イジュマー(合意)をサハーバ(預言者ムハンマドの教友)のそれだけに限り,コーランとハディースの文字どおりの意味(ザーヒルẓāhir)に忠実に従わねばならないとした師の教えを忠実に継承した。10世紀以降もタクリード(先人の模倣)を拒否し,イジュティハードの行使を強く主張した。早くホラーサーン,東部イランに伝えられたが,さしたる勢力とならなかった。イベリア半島では,イブン・ハズムのような熱烈な信奉者があったが,法学派としては強いまとまりがなく,12~13世紀ごろには消滅した。しかし,ザーヒル派のタクリード拒否は,後のイブン・トゥーマルトやイブン・タイミーヤによって継承され,さらに現代のサラフィーヤの主張にまで影響を及ぼしている。
執筆者:嶋田 襄平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報