改訂新版 世界大百科事典 「シェーカー家具」の意味・わかりやすい解説
シェーカー家具 (シェーカーかぐ)
Shaker furniture
18世紀後期から19世紀にかけてのアメリカで,シェーカー教徒が製作・使用した直線的で,簡潔で実用性に徹した家具の総称。シェーカーはイギリスからアメリカに渡ったクエーカーの一派で,ニューヨークを拠点に東部沿岸地域に設立されたキリストの再臨を信奉する教団。祈りの際に身体を激しく振動させることからシェーカーと名づけられた。独身主義,財産の共有,世俗からの分離を生活の原則として,食料,衣類,家具調度などを自力で生産し,信仰と労働による質素な修道的な生活を実践した。1850年代には信徒6000人,18の教団ができた。彼らは〈美と善の合一,美とは有用性である〉といった教義に基づき,不要な装飾を排除して,直線を構成原理として,生活の用を重視した簡素で機能的な家具を生産した。また生活空間をむだなく使用するために,折りたたみ式のテーブルや,造りつけの戸棚やたんす,書棚・机・たんすを一つにまとめた多目的家具,壁につるすことができるように3~4枚の背板を備えた軽快な椅子などが工夫され,実用家具がその特色となっている。
執筆者:鍵和田 務
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報