機能主義(読み)キノウシュギ(その他表記)functionalism

翻訳|functionalism

デジタル大辞泉 「機能主義」の意味・読み・例文・類語

きのう‐しゅぎ【機能主義】

functionalism
諸要素の機能や相互の関係に着目し、それぞれが全体の維持にどうかかわっているかという観点から、文化・社会現象をとらえようとする立場。
建築・工業などで、余分な装飾を排し、用途に応じたむだのない形態・構造を追求する傾向。

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精選版 日本国語大辞典 「機能主義」の意味・読み・例文・類語

きのう‐しゅぎ【機能主義】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] functionalism の訳語 )
  2. 文化の要素や社会の構造が人間の生存や環境適応に機能として関係する点を特に重視する考え。→機能学派
  3. 心理学で、意識ないし心的活動をもっぱら環境への適応の機能とし研究すべきであるという考え。有機体と環境との生物学的関連を重視するアメリカ心理学の主張。→機能心理学
  4. 近代建築理論の一つ。建築、工芸の形態は、もっぱらその目的と機能に従って設計されなければならないという主張。

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改訂新版 世界大百科事典 「機能主義」の意味・わかりやすい解説

機能主義 (きのうしゅぎ)
functionalism

19世紀末から20世紀前半にかけて,科学や芸術の諸領域で前後して提唱され,その後の展開に大きな影響を及ぼした方法論上の立場であるが,領域の違いに応じて提唱の動機もfunctionという概念の含意も異なり,むしろ〈関数主義〉と訳す方が適切な場合もある。たとえばこの時代の一般的な認識論的傾向をfunctionalismと呼ぶ場合がそうである。これは,実体概念を基軸としていた17,18世紀の考え方に対して,実体などというものは科学的に規定しえないものなのだから,科学はそうしたものを想定することなく,もっぱら現象の記述とその相互関係の法則的把握を目ざすべきだとする思想傾向であり,その限りでは同時代の反形而上学的な実証主義現象主義と立場を同じくするが,古い実証主義がとかく事実を固定的・機械論的にとらえがちであったのに対し,諸現象をもっと動的・関数的にとらえようとするものであった。この問題をさらに厳密に考えぬき質量,力,エネルギー,原子,時間,空間といった近代科学の基本概念を,実体的なものの表現としてではなく,現象相互の関係やその変化を法則的に表現しようとする関数概念と解すべきだと説くカッシーラーの主張(《実体概念と関数概念》1910)なども,〈機能(関数)主義〉と呼ばれてよい。

 一方,個別科学の領域で機能主義的と見られるのは,心理学においてはW.ジェームズの流れをくむデューイやJ.R.エンジェルらの機能心理学,それを継承するJ.B.ワトソン,G.H.ミードらの行動主義心理学,民族学や人類学の領域ではデュルケームの影響下に立つB.K.マリノフスキーラドクリフ・ブラウンらの機能学派,経済学におけるベブレンの制度学派,法学ではR.パウンドの社会工学,G.D.H.コールらギルド社会主義者の機能的国家論などである。しかし,この場合も,たとえば心理学における機能主義が,意識をその内容にではなく作用に即して考察し,その生物学的意味を解明しようとするものであり,C.ダーウィンやH.スペンサーの進化論の強い影響下に発想されたものであるのに対して,人類学におけるそれは,むしろ歴史主義や進化主義への批判から出発し,社会や文化を孤立した要素の複合体と見る従来の考え方に反対して,現存の制度や慣習の機能を全体としての文化や社会との関連のうちで解明しようとするものである。同じように〈機能の重視〉を主張しても,その〈機能〉の意味は一義的ではない。やはりこの時代(1890年代以降),建築や工芸の領域でもL. H. サリバンを中心とするシカゴ学派によって機能主義が提唱されたが(機能主義建築),これは〈形態は機能に従う〉というモットーのもとに美的価値と実用的機能との統一を目ざすものであったから,この場合の〈機能〉も心理学や人類学のそれとはかなり異なっている。

 このように,たまたま同じ〈機能主義〉を標榜したにしても,それぞれの主張内容にかなりのへだたりがあるのだから,それらの立場をむぞうさに一括するわけにはいかないが,しかしそれぞれの領域の置かれていた特殊な問題状況に応じて現れ方は違っても,そこにはやはり近代の実体論的思考や,その帰結である要素主義的・機械論的な考え方に反対して,あくまで経験に支えられる諸現象とその変化を全体的連関のなかで動的にとらえようとする時代の共通の志向が認められる。この志向がやがて20世紀の諸科学の主軸となる〈ゲシュタルト〉〈構造〉〈全体性〉〈システム〉といった諸概念の形成を準備することになるのでもあるから,機能主義を認識論および科学方法論の上での近代から現代への転換点としてとらえることは許されるであろう。
執筆者:

社会学あるいは社会システム分析において,機能主義とは,社会的諸部分の活動ないし作用を,より上位の社会的全体の目的を達成しもしくはその必要性をみたすはたらきという視角からとらえ,社会的全体とのかかわりにおいて評価し解釈する方法論的アプローチをいう。機能主義は,システムにおける構造形成とその変動を,システムの機能および逆機能にかかわらせて説明することを可能にする。この定義において社会的諸部分の活動とは,個人の行為であってもよいし,個人の集合としての集団や組織の活動ないし作用であってもよい。重要なことは,個人ないし部分社会が単独では存続しえず,みずからの存続のためにより上位の社会的全体と一定の関係をもつことを必要とする点である。部分という語はすでにそれ自体として全体というものを予定しているが,機能とはそのような社会的全体の目的達成ないし必要性の充足に対して部分が果たす貢献であり,そのような貢献がうまくいった場合には部分の現行のあり方は維持されうるが,そうでない場合にはそれは変動にむかうことを余儀なくされる。機能主義というのは機能に着目する考え方というほどの意味であって,部分と全体との機能的な連関に着目することによって,社会事象の生起に関して種々の解釈ないし説明を与えようとするアプローチにほかならない。

機能主義的思考の二つの古典的な形態は,社会有機体説と社会機械論に求められる。社会有機体説は生物学的な知見の社会事象への適用,社会機械論は力学的な知見の社会事象への適用である。とりわけ社会有機体説は,スペンサー学説に見るように,社会学理論の19世紀的形態として大きい役割を果たしたが,決定的な弱点はそれがアナロジーによる説明たるにとどまるということであった。

 このようなアナロジーによる説明からの脱却は,二つのステップを経て進行した。第1のステップは,社会システム,環境に対する適応,機能,構造,過程といった説明概念を,有機体のアナロジーを離れて社会分析それ自体のための用具として確立することであった。これは,デュルケームによる分業の機能の説明(《社会分業論》1893)や宗教の機能の説明(《宗教生活の原初形態》1912),ラドクリフ・ブラウンによる親族の機能についての説明(《未開社会における構造と機能》1952)などによって,推進された。第2のステップは,一般システム理論の社会システム論への導入であった。一般システム理論は,機械システムや有機体システムから抽出された原理をただアナロジーとして社会システムにあてはめるというのではなく,機械システム,有機体システム,社会システムがその一定側面に関して同型性isomorphismをもつと仮定し,その共通原理を定式化しようとするものである。社会システムの理論は,1950年代いらい,T.パーソンズ,レビM.J.Levy(1918- ),ホマンズG.C.Homans(1910-89),ルーマンN.Luhmann(1927- ),その他多くの人々によってさまざまな方向に発展をとげて現在にいたっている。

パーソンズによって創始され,その後多くの人々によって彫琢された構造-機能分析は,上述した機能主義のテーゼに〈構造〉の概念を導入し,現行の構造のもとでシステムの構成諸要素が機能的必要の充足(または〈システム問題〉の解決ともいう)を達成しうるならば当該構造は存続しうるけれども,そうでないならば当該構造はシステム問題をよりよく解決しうるようななんらかの新しい構造にむかって変動する,という命題を立てる。この命題は,小は親族組織や企業の組織のようなミクロ社会システムから,大は国民社会のようなマクロ社会システムにまで共通にあてはまりうる,構造持続と構造変動の生起を機能の観点から説明するための説明仮説である。この説明仮説をよりどころにして,たとえば日本の明治維新における社会構造変動を,幕藩制社会の構造が当時の国際的環境のもとでもはや機能的必要を充足しえなくなった結果として説明する理論を構築することが可能である。アメリカやヨーロッパ諸国の社会学・政治学において,先進社会の産業化と近代化の分析,低開発社会の発展における挫折の分析などに関して,構造-機能分析が大きい役割を果たしたのも同様の理由による。
執筆者:

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最新 心理学事典 「機能主義」の解説

きのうしゅぎ
機能主義
functionalism

意識を分析してその構成要素を発見し,その結合の状態と法則を明らかにしようとするティチェナーTitchener,E.B.の構成主義structuralismあるいは構成主義心理学structural psychologyの立場に対して,意識が,生活体が環境に適応する時にどのような役割・機能を果たすかを明らかにしようとする立場が機能主義,あるいは機能主義心理学である。

 生存への努力の中で適者が生き残り,適応できぬ者が淘汰されるというダーウィンDarwin,C.の進化論の考え(1859)は,自由競争と実用主義pragmatismの国アメリカで歓迎されたが,静的で実用性を否定する構成主義心理学は受容されなかった。進化論はスペンサーSpencer,H.(1870)を通してアメリカのジェームズJames,W.の『心理学原理』(1890)に色濃く反映され,ジェームズは,「われわれの感じ方,考え方は,それがわれわれの外的世界に対する反応を形作る上に役立つから現在のようなものになった」と,心的生活の有目的性を前提とした心理学を唱え,機能主義心理学の基礎を築いた。その基礎に立つデューイDewey,J.は,その論文「心理学における反射弧の概念」(1896)において機能主義心理学の立場をより明確にした。従来の反射弧の考えでは,感覚的刺激-中枢的結合-運動的反応の三要素がばらばらに考えられ,有機的統一を欠いていたが,弧arcは元来円の一部であって,全体としての円の中に位置づけられてこそそれは意味がある。その円とは調整coordinationであって,各要素は適応という目的の中で調整されていてこそ意味があるとデューイは主張し,これが機能主義心理学の独立宣言になった。しかし機能主義心理学を一つの学派として確立させたのは,同じシカゴ大学のデューイの後継者エンジェルAngell,J.R.であった。彼は論文「機能主義心理学の領域」(1907)によって機能主義心理学を明確に体系化し,これによってデューイによって基礎が作られたシカゴ学派を機能主義心理学の揺るがぬ牙城とした。

 この論文でエンジェルは機能主義心理学の特徴を3点挙げている。⑴それは心的要素の心理学ではなく,心的作用mental operationの心理学である。つまり意識の「内容content」の心理学ではなくて,意識の「はたらきhow」と「理由why」の心理学である。⑵それは意識の効用utility,すなわち,意識が環境の要求と生活体の必要の間をどのように媒介するかに関心をもつ心理学である。このような実用主義的な考えでは,意識の効用は適応的行動になって現われる。⑶それは生活体の身体的な部分と心的な部分の相互の関係を明らかにしようとする「一種の心理身体学psychophysics」である。身体的な部分というのは生理過程であるので,機能主義心理学は心的過程を身体的過程に,あるいはその逆に「置き換えるtranslate」生物学の一領域である。

 このような考えから,構成主義心理学からは期待されない動的な心理学の諸領域や応用心理学が発展することになる。なおシカゴ大学ではエンジェルの後継者の穏健な機能主義者のカーCarr,H.A.をはじめ,過激な行動主義を唱えたワトソンWatson,J.B.ほか,多くの著名な機能主義心理学者が育った。

 機能主義心理学の今一つの拠点はコロンビア大学であった。進化論が前提とする種内の個体変異の考えはゴールトンGalton,F.によって個人差研究へと発展し,その影響を強く受けて1891年にコロンビア大学に移ったキャッテルCattell,J.M.は,メンタルテストの基を築くなど中心的役割を果たした。コロンビア大学からは,動的心理学を唱え動機の役割を重んじコロンビア学派として一つの体系を示したウッドワースWoodworth,R.S.,試行錯誤学習のソーンダイクThorndike,E.L.,因子分析による知能因子説を唱えたサーストンThurstone,L.L.などが育った。シカゴ,コロンビア学派以外の機能主義心理学の推進者としては,児童・青年心理学の基礎を築いたホールHall,G.S.や発達心理学や社会心理学の先駆者のボールドウィンBaldwin,J.M.などを挙げることができる。 →構成主義
〔今田 寛〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「機能主義」の意味・わかりやすい解説

機能主義
きのうしゅぎ

機能主義は慣習、制度、価値などの社会的諸現象を、それらが社会のなかで果たす機能によって説明しようとする理論であり、1920年代、マリノフスキーとラドクリフ・ブラウンの2人の人類学者によって創始された。

 彼らは両者とも長期間の野外調査ののちに、それまで主流を占めていた文化進化論や伝播(でんぱ)論に対し、全体としての文化を個々の文化要素に分割し、統一体としての文化から切り離して扱っていると批判し、一つの社会のなかの文化要素は一見、独立していて無関係にみえても実は相互に密接な関係をもち、有機的に結び付いているのだと主張した。したがって、個々の慣習や制度を理解するためには、それらが全体の文化のなかでどのように「機能」しているのかを究明しなくてはならないとした。

 マリノフスキーはメラネシアのトロブリアンド諸島の調査で、社会、宗教、経済など生活全般にわたる資料を収集し、一つの制度がいかに社会組織、経済、宗教などと密接に関連しているかを明らかにした。彼の理論は、生物としての人間から始まり、他の動物と同様の基本的な生物学的要求と、集団生活を存続させるための派生的・文化的要求があるとし、これらの要求に応じるためにさまざまな制度、経済、教育、政治組織が存在するのだとした。したがってマリノフスキーのいう「機能」とは、個人の生理学的要求の充足と、ある制度が文化全体のなかで果たす役割をも含む、広い概念である。

 一方、ラドクリフ・ブラウンはベンガル湾東部のアンダマン島での調査により、この地域の儀礼が人々の連帯意識を強化し、社会的結合を高め、社会の統一にいかに貢献しているかを示した。彼によれば、社会体系はその維持・継続のためには一定の「存在のための必要諸条件」を満たさなければならないという前提があり、生物の有機体と社会体系のアナロジーによってこの前提を主張した。生物組織の維持がそれぞれの細胞や組織の活動によって保たれるように、社会体系もまたそれを構成する諸要素の正しい活動によって保たれるとした。彼の「機能」とは「部分がそれを含む全体社会の活動に対してなす貢献」であり、たとえば、ある慣習の機能とはそれが社会構造の維持に対して果たす役割である。ラドクリフ・ブラウンと彼の後継者たちの機能主義はマリノフスキーの機能主義と区分して構造機能主義とよばれることがある。

 その後、機能主義理論に対してはいくつかの批判が加えられた。社会の統合・均衡が強調され、社会変化を正常な状態からの逸脱として扱っており、かならずしも現実に即さない静的なモデルを考えていて、社会や文化の変動を扱うのには不十分であるとか、とくに歴史的研究を軽視する傾向があるなどの批判である。また、これと関連して、社会における統合的な力を過度に強調し、葛藤(かっとう)や非機能的要素を取り扱うのに欠けている、との批判も加えられる。以上のマリノフスキーとラドクリフ・ブラウンによって創始された機能主義は、その後、エバンズ・プリチャードやフォーテスに受け継がれ、さまざまな批判を受けたが、その基本的な考え方は、現在ではむしろ文化人類学では常識として扱われるようになっている。

[豊田由貴夫]

『ラドクリフ・ブラウン著、青柳まち子訳『未開社会における構造と機能』(1975、81・新泉社)』『マリノフスキー著、寺田和夫・増田義郎訳「西太平洋の遠洋航海者」(『世界の名著59 マリノフスキー/レヴィ=ストロース』所収・1967・中央公論社)』

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百科事典マイペディア 「機能主義」の意味・わかりやすい解説

機能主義【きのうしゅぎ】

functionalismの語訳。事物の本質や実体についての科学的説明は不可能であるとの立場から,現象とその相互関係を動的・作用的に記述しようとするもので,20世紀後半に有力化してきた科学方法論上の立場。生物学におけるダーウィン,心理学におけるG.H.ミード,人類学におけるラドクリフ・ブラウンマリノフスキーらがその代表者。
→関連項目サーリネン文化人類学

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知恵蔵 「機能主義」の解説

機能主義

建築設計に当たって機能性を最優先させる立場の総称。その視野は建造物の構造ばかりでなくデザインにも及ぶ。19世紀末、最初期の摩天楼の設計者として知られるアメリカの建築家ルイス・サリバンがアール・ヌーボーの装飾的な様式から脱したシンプルで無機質な建築を目指して「形態は機能に従う」と述べたのが起源とされるが、均質なユニバーサル・スペースを説いたミース・ファン・デル・ローエ、住宅を「住むための機械」と位置づけ、「近代建築の五原則」や「ドミノ・システム」を提唱したル・コルビュジエ、無装飾主義を標榜したアドルフ・ロースなど、主義主張を同じくする立場は同時代のヨーロッパの建築家のなかにも広く認められ、この考え方がモダニズム建築の核をなしていたことが分かる。1930年代初頭、「ボリューム」「規則性」「装飾忌避の原則」の3本の柱に定式化され、長らくモダニズム建築の規範として君臨したインターナショナル・スタイルは機能主義の1つの極点を示している。日本では、「社会を形成する建築は美しいことによってのみ流布し、機能として根付く」とする丹下健三の主張が大きな影響力を持っていた。

(暮沢剛巳 建築評論家 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「機能主義」の意味・わかりやすい解説

機能主義
きのうしゅぎ
functionalism

19世紀に生れた科学方法論の1つ。認識論的には,物の本質とか物自体などは認識不可能で,現象や属性だけが認識できるという不可知論的見地に立つ。一種の実証主義で機械的唯物論に反発する。諸現象の関連から対象を記述するので,流動,進化などの過程を重視する点で弁証法的立場に近いが,対象の本質を矛盾においてとらえず,同一律による連続の原理でとらえる点が異なる。

機能主義
きのうしゅぎ
functionalism

19世紀に生れた方法論の1つ。文化人類学や社会学においては,存在を構成要素間の作用関係と働きからとらえ,存在する物は機能的意味をもつと考え,現象の機能的分析を通して,現象を目標的な状態に対する有効性によって説明し,評価する立場となっている。

機能主義
きのうしゅぎ
functionalism

19世紀に生れた方法論の1つ。建築,工芸,デザインの分野では,用途,目的に適合する働きをいう。 19世紀のいわゆる折衷主義に反対し,20世紀初頭には機能を重視し,これを本質とするにいたった。

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世界大百科事典(旧版)内の機能主義の言及

【デザイン】より

…もちろん,それぞれの活動の本質は近代のデザインのなかに保持されている。たとえば,機能主義はどんな原始的な道具のなかにも見られる。しかし,デザインという語は,産業社会が成立して大衆が,生産された物の消費者となり,また政治的な平等が少なくとも名目的には原則となった時代の,人間の環境形成にかかわる活動をさして使われるのである。…

【民族学】より

…それらは,それぞれ文化の十分な理解のために必要な基本的な視角を提示し,かつそれによって文化理論を豊かにしていった。19世紀後半にイギリス,アメリカで盛んになった進化主義的民族学は,人類文化に共通の進化という現象と人類の基本的心性の同一性に注意を向けさせ,進化主義への反動として20世紀前半にドイツ,オーストリアやアメリカで盛んになった歴史民族学は,個別文化が歴史的に形成されたことを強調し,個々の文化要素や文化複合の空間的分布のもつ意味を問うており,1920年代以後イギリスで盛んになった機能主義は,個々の制度が全体社会の維持に果たす機能,あるいは個人の欲求充足に果たす機能が問題にされた。第2次大戦後,フランスにおいて盛んになった構造主義においては,文化を構成する個々の要素をそれ自体としてではなく,相互間の関係からなる構造として把握すること,ことに意識されていない構造の重要性を論じた。…

※「機能主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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