シクロペンタジエニル錯体(読み)シクロペンタジエニルサクタイ

化学辞典 第2版 の解説

シクロペンタジエニル錯体
シクロペンタジエニルサクタイ
cyclopentadienyl complex

シクロペンタジエニドイオン C5H5金属イオンとの錯体.一般式Mn (C5H5)nで表され,n = 2の場合はサンドイッチ型構造となる.その代表的な化合物はFe(C5H5)2で,フェロセンとよばれる.金属イオンとしては,第一,第二,第三遷移金属イオンや,希土類イオンのものなど,多数が含まれる.ただし,第一遷移元素以外はヒドリド混合錯体をつくるものが多い([MoH2(C5H5)2],その他).また,[M (C5H5)2]X型や[M (C5H5)2]X2型(Xは一価の陰イオン),それにM (C5H5)(MはLi,Naなど)型も存在し,構造も多様である.化学的性質は一般に安定である.また,C5(CH3)5は Cp* と略記され,C5H5と同様に遷移金属イオンと数多くの化合物をつくる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シクロペンタジエニル錯体
しくろぺんたじえにるさくたい
cyclopentadienyl complex

シクロペンタジエニルシクロペンタジエニドともいう)・アニオンC5H5-と金属イオンとの錯体。シクロペンタジエニル環を含む有機金属化合物には、環の一つの炭素と金属が直接σ(シグマ)結合しているものがある。たとえばケイ素スズ、鉛化合物などである。これに対し遷移金属の錯体では、金属はシクロペンタジエニル環に広がるπ(パイ)電子と配位結合をつくるので、π-シクロペンタジエニル錯体とよばれる。

 π-シクロペンタジエニル錯体は大きく2種類に分かれ、一つはサンドイッチ型化合物でメタロセンとよばれる。代表的な例としては、鉄を中心金属として含むフェロセンFe(C5H5)2がある。他の一つはシクロペンタジエニル環一つが金属と配位し、さらに一酸化炭素または一酸化窒素が配位したものでバナジウムマンガン、タングステン錯体などが知られている。多くは空気中で熱に対して安定である。エーテルなど多くの有機溶媒可溶。各金属で特有の色をもっている。

[佐藤武雄・廣田 穰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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