ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シスターニ」の意味・わかりやすい解説
シスターニ
Sistani, Ali al-
イラン生まれのイラクのイスラム教シーア派指導者。フルネーム `Alī al-Ḥusaynī al-Sīstānī。イラン北東部に生まれ,幼い頃からコーランを学んだ。イラクで学問を続けるため 20代前半に祖国を離れ,聖地ナジャフのシーア派最高位である大アヤトラ,アブル・カシム・ホイに弟子入りする。1979~89年イランを支配したルホラ・ホメイニとは異なり,闘争よりも静寂主義(キエティズム)を貫いた。1992年にホイの死をうけて,シーア派イスラム法学者の最高権威であるマルジャエ・タクリードとなり,スンニー派の支配が 3世紀も続いたイラクでシーア派を復権させることに力を注いだ。シーア派の宗教指導者だが,スンニー派のアラブ人やクルド人からも一目おかれ,イラク戦争後の民主政権樹立構想の場面で指導力を発揮した。2004年8月,心臓病治療のためにイギリスへ渡ったが,その間に対米強硬派のシーア派聖職者ムクタダ・サドルがナジャフを支配下に収め,アメリカとイラク暫定政府の軍隊に対して激しいゲリラ戦に打って出た。シスターニは手術を終えて帰国しサドルを説得,停戦合意をとりつけたが,多くのシーア派住民はサドルをスンニー派武装勢力からシーア派を守る英雄とみなし,穏健派のシスターニは政治の現場からの撤退を表明した。
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