シトー会建築(読み)シトーかいけんちく(英語表記)Cistercian architecture

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シトー会建築」の意味・わかりやすい解説

シトー会建築
シトーかいけんちく
Cistercian architecture

モレームのロベルトゥス (ロベール) によって 1098年フランス,ブルゴーニュ地方のシトーに創立された修道会に属する修道院および聖堂の建築様式。おもにロマネスク時代に隆盛した。シトー修道会は,クリュニー会やベネディクト会の華美な活動に反対してきびしく質素な生活環境を理想とし,その建築にも装飾性を最小限にとどめた地味な様式が求められている。高い塔を築く代りにアーケード式の鐘楼がつけられ,内部空間も狭く,全体の構造も単純である。しかし素朴できびしいそのフォルムや,壁画彫刻を排除した壁面の石組みなどが,ブルゴーニュ地方独特の形態美を示している。この様式は,クレルボーの修道院長であったベルナルドゥス (ベルナール) などの指導により,全ヨーロッパに広がり,中世に 700に近い修道院や聖堂が建造された。ベネディクト会の建築がフランスのゴシック建築に発展していったのに対し,シトー会の建築はスペインおよびイタリアのゴシック建築の基礎となった。代表的な作例は,1140年に完成したフォントネ聖堂で,回廊,集会室,寝室,食堂などを備え,横断半円筒ボールト (穹窿) をいただくラテン十字形プランの三廊式バシリカ建築であるが,クリアストーリーはなく,方形の祭室と翼廊に4つの礼拝堂をもつ。現存する最も古い典型的なシトー会建築である。

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