鐘楼(読み)しゅろう

精選版 日本国語大辞典 「鐘楼」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐ろう【鐘楼】

〘名〙 (「しゅ」は「鐘」の呉音) 鐘をつるしておいてつき鳴らすための建物。古くは二重の建物だったので楼と呼んだが、のちには一重になった。鐘つき堂。鐘楼堂。しょうろう。
法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)「一口鐘楼長三丈一尺広一丈八尺」

しょう‐ろう【鐘楼】

〘名〙 寺院の境内にあって、梵鐘をつるしてある堂。かねつき堂。しゅろう。
和蘭字彙(1855‐58)「klokhuis 鐘楼」
破戒(1906)〈島崎藤村二三親戚も無ければ妻子も無いといふ鐘楼(シャウラウ)番人に長の別離(わかれ)を告げた」 〔戴復古‐海上魚西寺詩〕

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デジタル大辞泉 「鐘楼」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐ろう【鐘楼】

しょうろう(鐘楼)」に同じ。
「―の影が何となくさびしく」〈花袋田舎教師

しょう‐ろう【鐘楼】

寺院の境内にある、梵鐘ぼんしょうをつるす建造物。かねつき堂。しゅろう。

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改訂新版 世界大百科事典 「鐘楼」の意味・わかりやすい解説

鐘楼 (しょうろう)

宗教建築や都城にあり,時刻や緊急情報などを知らせるため鐘を設置した建物。太鼓を置いたものは鼓楼という。高層とされることが多く,重い鐘を支える補強の構造をもつ。仏教寺院では時刻や非常を告げる施設として必ず設けられ,鐘の響きは功徳になるとされた。楼閣形式の実例は法隆寺西院に,袴腰(はかまごし)形式の例は大津市石山寺などにある。袴腰は中国の版築による高台形の楼台の外形を模したもので,古くは表面をしっくい仕上げとし,中世以降は下見(したみ)板壁を外装とした。簡単な四本柱のものは鐘台とも鐘つき堂とも呼ぶ。楼門の上層に鐘をつる鐘楼門(奈良県長岳寺など)は平安後期からあった。
執筆者:

古都市の中心部に設けられ鼓楼と並び立つ。鐘と太鼓とはもともと寺廟の殿内に置かれ,祭儀の順序を知らせるのに使われたが,のち外門の内側や両側に台を作り,上に鐘楼(東)と鼓楼(西)とを立てて装飾とした。城壁都市の中央に鐘・鼓楼を設けたのは元代のころからである。北京では宮城の北に位置し,鐘楼は高さ33mの煉瓦造りの台上に立てられ,清代にはそこにつられた銅鐘を打って日没時刻を知らせた。
執筆者:

教会堂の傍らまたは上部に立ち,鐘塔とも呼ぶ。英語でベル・タワーbell tower,ベルフリーbelfry,イタリア語でカンパニーレcampanileという。ときに鐘を入れる窓をうがった厚壁のこともある。7世紀ごろからつくられ始め,ロマネスク期以後しだいに大型化し,教会堂の存在を主張する重要な建築構成要素として,意匠に工夫がこらされるようになる。教会堂正面に接して建ち下部が玄関を兼ねる単塔形式のものや,正面両翼に2基並ぶ双塔形式をとるものがある。フランスのノルマンディーやイギリスでは,交差部上に建て,ときに側窓から採光をした。イタリアでは教会堂から独立した1基の塔として建てられることが多い。12世紀以後(ゴシック期)には教会堂各部の出隅,入隅に多数の鐘楼が建てられ,しばしば高い尖頂屋根を戴き,華麗な装飾を加えて天を仰ぐ教会堂の威厳を象徴した。ルネサンス以後は尖塔に代わって,小ドームや採光塔が冠せられた。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鐘楼」の意味・わかりやすい解説

鐘楼
しょうろう

鐘を吊(つ)り下げて撞(つ)き鳴らすための建物。「しゅろう」とも読み、俗に釣鐘(つりがね)堂という。古代の寺院では伽藍(がらん)を構成する主要な建物の一つで、金堂の背後に経楼と対称に配された。建物が楼(たかどの)としてつくられたのは、鐘を高い位置に吊るしたほうが遠くまで響くからであったろう。古代中国の様式を模したと推定される法隆寺西院伽藍の鐘楼(平安時代)は、上下2層からなる楼造(たかどのづくり)の古式の鐘楼として、唯一の遺構である。法隆寺東院鐘楼(鎌倉時代)は、下層が裾(すそ)広がりの袴腰(はかまごし)になり、中世以降はこの形式の鐘楼が主流を占める。また、中世からは楼造とせずに、東大寺鐘楼(鎌倉時代)のように四隅に柱を立て、四方を吹き放しとするだけのものも出現する。この種の鐘楼は、鐘撞(かねつき)堂、鐘堂、鐘舎、鐘台の名でもよばれる。鐘楼は寺院において、時鐘や行事の合図を知らせるために必須(ひっす)のものであるが、仏教寺院に限らず、キリスト教の教会などでも教会堂に付属または独立して建てられており、これらは塔を形成するものが多い。

[工藤圭章]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鐘楼」の意味・わかりやすい解説

鐘楼
しょうろう

梵鐘を掛ける寺院付属の堂舎。七堂の一つ。「しゅろう」とも読み,俗に鐘撞堂,釣鐘堂という。寺院生活の時報の役割をもつ。経楼と対し,鼓楼とともに伽藍の両翼に位置するのが古い形式である。単層,重層に大別されるが,古代,中世,近世とさまざまに変化しており,現在では,高い土台の上に四本柱を立て,四方を吹抜きにしたものが一般的である。

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百科事典マイペディア 「鐘楼」の意味・わかりやすい解説

鐘楼【しょうろう】

〈しゅろう〉とも。仏教寺院で梵鐘(ぼんしょう)をつるす堂で,古くは経楼(蔵)と対した。一般には鼓楼に対し,伽藍(がらん)の両翼をなす。法隆寺のもののように腰に組勾欄(くみこうらん)をめぐらした楼建築のものが古く,鎌倉時代には袴腰(はかまごし)造や吹放(ふきはなし)の形式ができた。

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世界大百科事典(旧版)内の鐘楼の言及

【鼓楼】より

…中国の都市の中央部に設けられた楼閣で,中につるされた太鼓をうって標準時刻を知らせた。その付近に鐘楼もあるのが普通で,宋代の初め洛陽の宮城の前面東南隅に鼓楼,西南隅に鐘楼を設けたのが起源かといわれ,近世中国都市のシンボルのようになった。仏寺では古くから鼓楼と鐘楼とを併置したようであるが,後世ほとんどの神廟や道観なども境内にこの2建築をおく習慣となっている。…

【塔】より

…教会堂の塔は祈りの時刻をはじめ,さまざまなメッセージを伝える鐘と結びついて建てられた。鐘楼(鐘塔)が独立して建てられることも少なくない。独立した鐘塔は,とくにイタリアで多く見られ,ロマネスク様式のピサの斜塔(1173‐1350ころ)や,ゴシック期のフィレンツェの大聖堂の鐘塔(いわゆる〈ジョットの鐘塔〉。…

※「鐘楼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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