シャンクガイ(読み)しゃんくがい(英語表記)chank shell

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャンクガイ」の意味・わかりやすい解説

シャンクガイ
しゃんくがい
chank shell
[学] Xancus pyrum

軟体動物門腹足綱オニコブシガイ科の巻き貝。インド西岸とスリランカに分布する。殻高15センチメートル、殻径10センチメートルぐらいに達し、厚く重い。全形は短い紡錘形をしている。殻質は白いが生時は厚いオリーブ色の殻皮をかぶっている。殻口はやや狭い紡錘形で、軸唇に四つのひだがある。ヒンドゥー教の聖貝として崇(あが)められ、ビシュヌの神の像はつねに手にこの貝を持っている。ごくまれに産出する左巻きの奇形個体はとくに尊重され、貝殻と同じ重さの金と同価とされる。仏教パゴダの中にも安置され、この貝でくんだ水は病気を治す奇跡をもたらすなどの信仰がある。また、この貝は殻が厚いので、輪切りにして装身具にも用いられる。

[奥谷喬司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シャンクガイ」の意味・わかりやすい解説

シャンクガイ
Turbinella pyrum; Indian chank shell

軟体動物門腹足綱オニコブシガイ科。殻高 14cm,殻径 7.5cm。殻は厚質堅固,太い紡錘形で白色であるが,黒褐色のビロード様の厚い殻皮をかぶっている。体層は大きい。殻口内の軸唇にはひだがある。ふたは革質で黒褐色。インド西岸,スリランカに分布し,インドの聖貝として知られる。これは,聖典『ベダス』をシャンクに盗まれ,ビシュヌ神 (常に本種を手に持っている) がシャンクを滅ぼして聖典を取戻したという話に由来する。殻は通常右巻きであるが,まれに左巻きのものもあり,それは金と等価であるといわれる。かつてはインドのトラバンコール (旧土侯国) の国章とされた。またヒンドゥー教では装身具,副葬品に用いている。

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