日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュピーゲルマン」の意味・わかりやすい解説
シュピーゲルマン
しゅぴーげるまん
Sol Spiegelman
(1914―1983)
アメリカの分子生物学者。1944年ワシントン大学で学位を得る。1949年コロンビア大学教授。1969年癌(がん)研究所所長。適応酵素の研究、遺伝子作用の機構、タンパク質や核酸の生合成など、微生物の遺伝学および生化学的研究を行う。1960年野村眞康(のむらまさやす)(1927―2011)、ホールBenjamin D. Hall(1932―2019)とともに、ファージ感染後細菌内でファージDNA(デオキシリボ核酸)に似たRNA(リボ核酸)が合成され、細胞内顆粒(かりゅう)リボゾームへと移行することをみいだした。1961年ジャコブとモノーにより、DNAの情報がタンパクへ翻訳される仲立ちとしてのメッセンジャー仮説が出され、このRNAはDNAのもつ情報の運び屋、すなわちメッセンジャーであることが明らかになった。同年シュピーゲルマンはホールとともに、このメッセンジャーRNAを熱変性させ、1本鎖としたファージDNAと混ぜ、DNAとRNAからなる分子を取り出して、両者の塩基配列の相補性を示すことによって、これがDNAの転写産物であることを証明した。
[石館三枝子]