改訂新版 世界大百科事典 「シレル」の意味・わかりやすい解説
シレル
Leon Schiller de Schildenfeld
生没年:1887-1954
ポーランドの演出家。大商人の子で,大学を中退して歌い手となり,2年間パリに遊んでクレーグの愛顧を受けた。帰国の翌年(1910)自殺未遂事件を起こしたが,この波乱に富むスタートは〈劇界史で最大の人物〉となる生涯を暗示する。左翼活動でリボフ(現,ウクライナ領)への追放(1932),アウシュビッツ送りと釈放(1941),偽修道僧(1943-44)を経て,第2次大戦後の統一労働者党への入党,ワルシャワ演劇大学長就任,さらにポーランド劇場長解任(1950)など,20世紀に生きる〈ルネサンス人間〉の面目を全人生で発揮した。演出の領域も超人的に広く,モニュメンタル劇(ミツキエビチ《父祖の祭り》,クラシンスキ《非神曲》),左翼政治劇(ブレヒト《三文オペラ》,ハシェク《兵士シュベイク》,トレチャコフ《吼えろシナ》),音楽劇(古今の歌のバラエティ・ショー風のものを編み出す)に独創を盛った。晩年にはブレヒトと親交を結んだ。評論,教育を通じた影響も多大である。
執筆者:工藤 幸雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報