チェコスロバキアの作家。貧しい教師を父としてプラハに生まれ、少年時代から奇行が多く、曲折ののち商業学校を卒業。一時銀行に勤めたが放浪癖のため辞職、雑文記者となり、オーストリア帝政下のチェコで、国家機構やプチブル根性を風刺するユーモア短編を手当たりしだい書きまくり、無頼の生活を送った。作品の傾向は文学的ダダイズムと評されるが、アナキスト的政治運動にも関与し、酒場政党をつくって選挙に立候補しさえした。第一次世界大戦中、オーストリア軍の一兵士として召集され東部戦線に回されたが、ロシア側に走り、いわゆるチェコ軍団の一員となった。さらにボリシェビキ革命の成功後は赤軍に移り、政治委員まで務めた。戦後の1920年、独立した祖国での共産主義革命を促進すべくプラハに戻ったが、すでにマサリク治下の民主政治が確立され、革命の夢は消えていた。やむなくプラハを去って、彼を世界的に有名にした『兵士シュベイクの冒険』(1921~23)の創作に専念したが、心臓発作のため完成を待たずにこの世を去った。
文学的出発は非常に早く、商業学校の友人と共著の詩集『五月の叫び』(1903)があり、生前に『よき兵士シュベイク その他の不思議な物語』(1912)、『わたしの犬商売 その他のユーモア短編』(1915)などを公刊。死後も『「法の枠内でのおだやかな進歩」党の歴史』(1962)をはじめ、数多くの新資料が発掘されている。
[飯島 周]
チャペックと並んで世界で一番よく知られているチェコの作家で,ジャーナリスト。人間の歪曲化によるノンセンスを描き出し,ありきたりの平凡な人間の道徳的優位さを好んで描いた。多数のユーモア風刺短編作品中,未完の二等兵物語《世界大戦での善良なる兵士シュベイクの運命》(第1部1921,第2,第3部1922,第4部1923。以下をバニェックK.Vaněkが引き継ぎ完結させる。《兵士シュベイクの冒険》の訳名でも知られる)が世界的にヒットし,数多くの外国語に翻訳され,主人公のシュベイクŠvejkはハムレットやドン・キホーテのように,単なる作品の一主人公からチェコ人の一つのタイプのモデルとなった。
執筆者:千野 栄一
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…1918年から92年まで続いた中欧の共和国。国名通称はチェコ語,スロバキア語ともČeskoslovensko。1920‐38年,1945‐60年の正式国名は〈チェコスロバキア共和国Českoslovká republika〉。1948年以後は社会主義体制をとり,60年からの正式国名は〈チェコスロバキア社会主義共和国Československá Socialistická republika〉。1969年よりチェコ社会主義共和国とスロバキア社会主義共和国の連邦制に移行したが,89年の〈東欧革命〉の進行過程で両共和国で連邦制の見直しが図られ,正式国名を〈チェコおよびスロバキア連邦共和国Česká a Slovenská Federativní Republika〉に変更した。…
※「ハシェク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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