詩劇(読み)しげき

日本大百科全書(ニッポニカ)「詩劇」の解説

詩劇
しげき

poetic dramaの訳語。韻文形式の台詞(せりふ)による演劇。狭義には韻文劇をさすが、今日では詩的内容と情緒をもつ散文劇をも広く含める。古代のギリシア劇をはじめ、エリザベス朝のシェークスピア劇にみられるブランク・バースblank verse、フランス古典主義時代のラシーヌらのアレクサンドランalexandrinなど、戯曲は本来韻文形式であったが、近代に入るとしだいに散文が増えて、19世紀には主流となり、韻文劇は劇場から追放された。第一次世界大戦後は、近代リアリズム演劇の行き詰まりから詩劇が見直され、復活をみた。イギリスの詩人T・S・エリオットは詩劇の復興を提唱し、『寺院の殺人』(1935)、『カクテル・パーティ』(1949)などで実践し、C・フライらが後を追った。日本の現代戯曲では、加藤道夫の『なよたけ』(1946)のように詩的幻想味豊かな詩劇もあるが、福田恆存(つねあり)が『明暗』(1956)で、各行に七つのストレス(強音部)を置く定型詩劇の試みを行っている。

[藤木宏幸]

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デジタル大辞泉「詩劇」の解説

し‐げき【詩劇】

詩の形式で書かれた劇。韻文劇。広義には詩的内容と情緒をもつ劇も含める。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「詩劇」の解説

詩劇
しげき
verse drama

韻文によって書かれた劇。ギリシア悲劇をはじめ,西ヨーロッパの古典劇は韻文で書かれているのが普通であったが,やがて劇中喜劇的部分や喜劇には散文が用いられるようになり,18世紀には悲劇,喜劇ともに散文劇が主流をなすにいたった。ビクトリア朝にはイギリスの R.ブラウニングや A.テニソンらの詩人による劇詩の試みはあるが,演劇における韻文の効果を現代に復活させる努力が意識的になされるようになったのは 19世紀末から 20世紀に入ってからで,代表的作家としてはアイルランドの W.B.イェーツ,イギリスの T.S.エリオット,C.フライ,アメリカの M.アンダーソン,スペインの G.ロルカらがあげられる。

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精選版 日本国語大辞典「詩劇」の解説

し‐げき【詩劇】

〘名〙 (poetic drama の訳語) 韻文や詩の形式で書かれた劇。古代から劇の主流だったが、一九世紀後半の近代劇以降、散文劇に押されて衰退。第一次世界大戦後、イギリスの詩人T=S=エリオットが復興。韻文劇。
※古典と現代文学(1955)〈山本健吉〉詩の自覚の歴史「彼の詩劇は、日本の詩的自覚の変遷の上に組みこまれなければならない」

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百科事典マイペディア「詩劇」の解説

詩劇【しげき】

韻文による演劇。散文によるものよりも先行し,ギリシア,ローマ,古典主義,ロマン主義期の演劇は多く韻文によっており,散文による演劇が主流になるのは西欧近代以後である。19世紀末以来,W.B.イェーツやT.S.エリオット,W.H.オーデンらの詩人によって詩劇の復興が試みられている。
→関連項目

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世界大百科事典 第2版「詩劇」の解説

しげき【詩劇 poetic drama】

韻文を用いた演劇。演劇において詩的言語が散文的言語に先行したことは,歴史が証明している。演劇の母体祈禱(朗誦)や舞踊を伴った宗教的祭儀,つまりリズミカルな音声言語の語られる場にあったことを思えば,これは当然といえよう。ディオニュソス祭儀に由来するギリシア悲劇(ギリシア演劇)も,中世キリスト教会の神事の展開としての聖史劇,秘跡劇も,そして寺社に所属して祭礼のおりにを演じた猿楽師たちの後身である観阿弥,世阿弥も,すべて詩劇である。

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