改訂新版 世界大百科事典 「クレーグ」の意味・わかりやすい解説
クレーグ
Edward Henry Gordon Craig
生没年:1872-1966
イギリスの演出家,演劇理論家。名女優エレン・テリーを母として生まれ,俳優から演出に進む。近代リアリズムに反対し,模写的ではなく象徴的で詩的な装置や照明が大きな役割を果たす劇を主張した。1904年にイギリスを離れた後は,12年にモスクワ芸術座で《ハムレット》を演出するなど,実際活動はわずかしかしていない。1908年以後イタリアに住み,雑誌《仮面》を創刊,編集して自らの理論の普及に努めた。彼によれば,劇は戯曲,俳優,装置,照明,効果などが一体となる総合芸術で,それを統一するのは演出家であり,俳優は演出家に従属する〈超マリオネット〉となる。彼の主張はリアリズムによった人々には攻撃されたが,劇場の詩を復活させ,イェーツ,ラインハルトなどに影響を与えたことは認めねばならない。おもな著作に《演劇芸術について》(1911),《新しい演劇に向かって》(1913),自伝《わが日々の物語の索引》(1957)など。
執筆者:喜志 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報