実践
じっせん
practice
ある目的成就の過程のこと。理論あるいは認識の反対概念として用いられる。目的を異にするおのおのの分野によって実践も異なるので,実践は多種多様な形態をもつ。またどの分野の実践が重視されるかは古来から思想傾向によってそれぞれ異なっている。宗教家は宗教的実践を第一に重視し,心情や意図よりも社会的効果を重視する政治家にとっては政治的実践が決定的要素となる。一定の方法によって目的の成就がなされ,それが反復,習慣化されると,それは一種の法則として認識されるようになる。ここに各分野における実践理論が生じ,その分野に照応した理論体系が生じる。したがって学問が発達し人間が実践の法則性を意識的に追求すればするほど,目的の成就には高い効率が保障されるようになる。ここに実践が理論と密接に連関して考察されるゆえんがある。このような実践と理論との連関を最も極端な形に推し進めた一つの例が「実践」のために「理論」を形成したマルクス主義である。
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デジタル大辞泉
「実践」の意味・読み・例文・類語
じっ‐せん【実践】
[名](スル)
1 主義・理論などを実際に自分で行うこと。「理論を実践に移す」
2 哲学で、
㋐人間の倫理的行為。アリストテレスの用法で、カントなどもこの意味で用いる。
㋑人間が外界についてもっている自らの知識に基づき、これに働きかけて変革していく行為。マルクスとエンゲルスによって明らかにされた意味。
[用法]実践・実行・実施――「計画を実践(実行・実施)する」のように、実際に行う意では相通じて用いられる。◇「実践」は理論・徳目などを、みずから実際に行う場合に多く使う。「理論と実践」「神の教えを実践する」など。◇「実行」は最も普通に使われるが、倫理的な事柄についてはあまり用いない。「親孝行の実践」に、「実行」を用いると不自然な感じになる。◇「実施」は、あらかじめ計画された事・行事などを実際に行う意で、「減税計画を実施する」「試験の実施期間」などと用いる。
[類語]実行・履行・行う・行動・躬行・励行・実施・施行・執行・決行・敢行・断行・遂行・挙行・強行・再挙・執り行う・手を下す
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じっ‐せん【実践】
〘名〙
① 考えを実際に行なうこと。自分で実地に行ない、行為、動作にあらわすこと。実行。〔音訓新聞字引(1876)〕 〔
宋史‐理宗紀二〕
②
(イ) 理論に対して、行為、行動、態度など。
(ロ) 人間が行動によって周囲の世界に働きかけて環境を意識的に変化させること。この意味での実践の其本的形態は物質的生産活動であり、さらに階級闘争、科学上の実験なども含まれ、認識または理論は実践に照らして検証される。たとえばマルクス主義の実践、また
プラグマティズムの実践など。〔
哲学字彙(1881)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
じっせん【実践】
一般に,抽象的思弁としての〈理論〉に対して,人間の自然や社会に対する〈働きかけ(活動)〉をいう。西欧語では,practice(英語),Praxis(ドイツ語),pratique(フランス語)など。その場合,自然に対する働きかけを,とくに〈労働〉と呼び,社会に対する働きかけを,倫理的・政治的活動として,とくに〈行為〉(英語conduct,ドイツ語Handlung,フランス語conduite)と呼ぶことがある。
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普及版 字通
「実践」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の実践の言及
【倫理学】より
…しかし倫理については種々の謬見や邪説もありうるのだから,それらと正しい説とを見分けるに足る批判力を身に付けるという意味では,倫理学についての素養もある程度の有効性をもちうると,カントなどは考えている。さらに,これはアリストテレスなどがすでに明確にとっている立場なのであるが,倫理の問題となると,それについて知識を有することも重要ではあるが,結局はそれが実践として正しく現実化されることが肝要である。当の知識が単なる空理空論であって,実践的にはまったく無効であるとすれば,それは倫理的には無意義なことであり,むしろ逆に,倫理学などまったく知らなくても,当人が一個の信頼すべき人間として行動し生活できるというほうがよほど有意義であるという事情が,倫理の問題にはある。…
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