日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ジブラーン・ハリール・ジブラーン
じぶらーんはりーるじぶらーん
Jibrān alīl Jibrān
(1883―1931)
レバノンの作家。レバノンのブシェッリーという町の名家に生まれる。のちにアメリカに渡り、ボストンからニューヨークに移り、その地で没する。恵まれた才能を余すところなく発揮し、作家、瞑想(めいそう)的詩人として活躍し、さらには絵画においても秀作を残した。ジブラーンが紡ぎ出すことばには、英知と神秘性、さらに音楽的な響きがあり、読者の心のひだをいやおうなく震わせるものがある。著作は『抗(あらが)う魂』(1948)、『涙と微笑』(1950)、『折れた翼』(1952)など数多いが、彼の名を不朽にしたのは『予言者』(1923)であり、『予言者』のジブラーンといわれるほどである。この作品は彼固有の霊的世界に人間の魂を解き放ち、深い洞察を加えたもので、アメリカの若き迷える世代に導きの手を差し伸べ、大きな影響を与えた。
[奴田原睦明]