日本大百科全書(ニッポニカ) 「スズダリ」の意味・わかりやすい解説
スズダリ
すずだり
Суздаль/Suzdal'
ロシア連邦西部、ヨーロッパ・ロシア中央部にあるウラジーミル州の古都。ウラジーミルとともに、モスクワを中心とする観光ルート「黄金の環」の重要な要素となっている。人口約1万5000。1024年初めて年代記に現れ、12世紀前半にロストフ・スズダリ公国、また13世紀にはスズダリ公国の首都となったが、1238年タタール軍の侵入によって破壊された。その後、一時スズダリ・ニジェゴロド公国の首都となり、14世紀末には新興のモスクワ大公国の支配下に入って、以来政治的意味を失った。だが、宗教的意味はその後も保持し続け、主教座(16世紀から19世紀までは大主教座)所在都市であった。現在の町は、博物館都市として古代ロシアを彷彿(ほうふつ)させる建築記念物を多数擁している。なかでも、クレムリン敷地内にある1222~25年建立の聖母降誕寺院は名高い。この寺院が、タマネギ形の大丸屋根と四つの小丸屋根をもつ現在の形となったのは、18世紀中葉である。内部には、13世紀のフレスコ画や、二つの「黄金の扉」などが残されている。宗教的中心地としてのスズダリには、その後も多数の寺院、教会、修道院が創建されたが、とくにスパソ・エウフィミエフ修道院(16~17世紀)、リスポロジェンスキー修道院(16~19世紀)、ポクロフスキー修道院(16~18世紀)など、現存する五つの修道院の建築群は、貴重な文化遺産となっている。1967年、旧ソ連邦閣僚会議は、「スズダリにおけるツーリスト・センター設立」に関する決議を採択して、古都のいっそうの整備を図った。1992年スズダリとウラジーミルの白石の建造物が世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。
[栗生沢猛夫]