内科学 第10版 「スポロトリコーシス」の解説
スポロトリコーシス(真菌症)
深在性真菌症の中では最も頻度が高い.
病原菌
Sporotrix schenckii.土壌中に生息することが多く,腐木,植物にも寄生する.農業や園芸業従事者,子どもに多い.通常外傷により接種され,数週〜数カ月の潜伏期間を経て発症する.
臨床症状(図4-14-6)
おもに皮膚を,まれに粘膜・骨・肺をも侵す.
1)リンパ管型(lymphatic form): 最も多い(61%).侵入部位(上肢先端・顔など)に淡紅色丘疹を生じ,やがて爪甲~胡桃大の結節を形成する.早晩自潰して増殖性潰瘍となる.ついでリンパ管に沿って求心性に飛石状に,皮下結節を生ずる.
2)固定型または限局性(localized form): 1)についで多い (37%).原発巣にとどまる単発型で,顔・手背・前腕に多い.淡紅色丘疹として発し,浸潤性小結節・結節を形成,自潰,潰瘍化する.しばしば肉芽腫様.
3)播種型(disseminated form): 近年はきわめてまれ.全身汎発性に皮下結節を生じ,後に皮膚と癒着・自潰・潰瘍化する.
組織所見
中央に小膿瘍を有する真皮〜皮下の慢性肉芽腫性病変.周囲に巨細胞を混ずる類上皮細胞,その外にリンパ球・形質細胞が浸潤する.膿瘍中に星芒体(asteroid body),巨細胞中あるいは遊離して菌要素(胞子)をみる.
診断
①培養(鱗屑・痂皮・膿汁・生検組織片から1〜2週で灰白色,黒褐色の表面湿性の絨毛状コロニーを得る.スライド・カルチャーで菌種を確認),②組織検査(PAS 陽性の菌要素や星芒体の確認),③膿汁・滲出液 PAS 染色(塗沫標本で菌要素・星芒体を探す),④スポロトリキン反応(特異性が高い).
鑑別診断
癤(腫症),慢性膿皮症,膿痂疹.
治療
イトラコナゾールまたはテルビナフィンの内服,ヨードカリ内服,温熱療法.これらを併用することもある.[大塚藤男]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報