スポロトリコーシス(英語表記)Sporotrichosis

六訂版 家庭医学大全科 「スポロトリコーシス」の解説

スポロトリコーシス
Sporotrichosis
(皮膚の病気)

どんな病気か

 真菌であるスポロトリックス・シェンキーが皮膚に感染して、慢性の結節(しこり)や潰瘍性の病変を生じる病気です。

原因は何か

 原因菌のスポロトリックス・シェンキーは自然(屋外)環境中に存在する菌で、日本では南の地方に多くみられます。自然環境中で、外傷により菌が侵入して発症します。したがって、住んでいる場所、年齢(外傷を受けやすい小児に多い)、成人では、職業(農作業に従事するなど)や趣味などが関係します。好発部位は、露出しやすい顔面や手から前腕などです。晩秋から冬にかけて多くみられます。

症状の現れ方

 リンパ管型と固定型の病型があります。

 リンパ管型は、手や指などの外傷部位に腫瘍あるいは肉芽腫(にくげしゅ)状に盛り上がり、潰瘍を伴う結節が原発巣として生じ、そのあとリンパ管沿いに結節状の転移巣を示します。

 固定型は顔面に多く、リンパ管を介しての転移は認められず、肉芽腫性結節を示します。

検査と診断

 真菌検査、病理検査、皮膚反応などで診断します。真菌検査には直接鏡検培養検査があり、直接鏡検は白癬(はくせん)の場合と同じように病変の一部を採取して顕微鏡で調べます。しかし、白癬やカンジダ症に比べて菌要素を検出しにくい病気です。培養検査も白癬の場合と同様で、特徴的な菌の集落が生えます。

 病理検査では一部の組織を培養検査に回すこともでき、最も確実な診断方法です。局所麻酔をして病変の一部をメスなどで採取し、そのあとを縫合します。特徴的な菌要素の検出や、慢性肉芽腫像などで診断できます。

 皮膚反応はスポロトリキン反応といいますが、菌の培養液でつくった抗原液を結核ツベルクリン反応と同じように皮内反応させて48時間後に判定します。特異性が高く、診断に有用です。

治療の方法

 内服療法、温熱療法、手術療法などがあります。

 内服療法ではイトラコナゾール(イトリゾール)、テルビナフィン(ラミシール)、ヨウ化カリウムなどを用いますが、2~3カ月の治療が必要です。皮膚真菌症診断・治療ガイドラインでは、ヨウ化カリウムが第一選択薬とされています。

 温熱療法には使い捨てカイロが使われることが多いです。

病気に気づいたらどうする

 皮膚真菌症に共通していえることですが、抗生剤では治りません。外傷後の傷が抗生剤を内服しても治らない時は本症の可能性もあるので、皮膚科専門医を受診してください。

加藤 卓朗

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

内科学 第10版 「スポロトリコーシス」の解説

スポロトリコーシス(真菌症)

(3)スポロトリコーシス(sporotrichosis)
 深在性真菌症の中では最も頻度が高い.
病原菌
 Sporotrix schenckii.土壌中に生息することが多く,腐木,植物にも寄生する.農業や園芸業従事者,子どもに多い.通常外傷により接種され,数週〜数カ月の潜伏期間を経て発症する.
臨床症状(図4-14-6)
 おもに皮膚を,まれに粘膜・骨・肺をも侵す.
1)リンパ管型(lymphatic form): 最も多い(61%).侵入部位(上肢先端・顔など)に淡紅色丘疹を生じ,やがて爪甲~胡桃大の結節を形成する.早晩自潰して増殖性潰瘍となる.ついでリンパ管に沿って求心性に飛石状に,皮下結節を生ずる.
2)固定型または限局性(localized form): 1)についで多い (37%).原発巣にとどまる単発型で,顔・手背・前腕に多い.淡紅色丘疹として発し,浸潤性小結節・結節を形成,自潰,潰瘍化する.しばしば肉芽腫様.
3)播種型(disseminated form): 近年はきわめてまれ.全身汎発性に皮下結節を生じ,後に皮膚と癒着・自潰・潰瘍化する.
組織所見
 中央に小膿瘍を有する真皮〜皮下の慢性肉芽腫性病変.周囲に巨細胞を混ずる類上皮細胞,その外にリンパ球・形質細胞が浸潤する.膿瘍中に星芒体(asteroid body),巨細胞中あるいは遊離して菌要素(胞子)をみる.
診断
 ①培養(鱗屑・痂皮・膿汁・生検組織片から1〜2週で灰白色,黒褐色の表面湿性の絨毛状コロニーを得る.スライド・カルチャーで菌種を確認),②組織検査(PAS 陽性の菌要素や星芒体の確認),③膿汁・滲出液 PAS 染色(塗沫標本で菌要素・星芒体を探す),④スポロトリキン反応(特異性が高い).
鑑別診断
 癤(腫症),慢性膿皮症,膿痂疹.
治療
 イトラコナゾールまたはテルビナフィンの内服,ヨードカリ内服,温熱療法.これらを併用することもある.[大塚藤男]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

栄養・生化学辞典 「スポロトリコーシス」の解説

スポロトリコーシス

 スポロトリクス症ともいう.慢性の皮膚の真菌症.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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