日本大百科全書(ニッポニカ) 「セービン」の意味・わかりやすい解説
セービン
せーびん
Albert Bruce Sabin
(1906―1993)
アメリカのウイルス学者、医学者。当時ロシア領であったポーランドのビャウィストクに生まれ、1921年両親とともにアメリカに渡り、のち市民権を得た。ニューヨーク大学に学び、1931年学位を取得。ニューヨーク市ベルビュー病院、ロックフェラー研究所を経て、シンシナティ大学教授となった。1970~1972年イスラエルのワイズマン研究所に勤め、以後、南カリフォルニア医科大学教授。二十数年間ポリオの予防のための生ワクチンの開発に努め、野生の強毒ポリオウイルスをサルの腎(じん)細胞培養で継代してその毒性を減弱し、1956年ごろ経口ポリオ生ワクチン(セービンワクチン)の開発に成功した。1960年(昭和35)日本でポリオが大流行し、そのさなかの1961年7月、ソ連(当時)製・カナダ製の経口ポリオ生ワクチンが緊急輸入され、投与を開始、流行は急速に収まった。こののち、日本ではセービンからポリオ生ワクチン用のウイルス株(1、2、3型)を譲渡され、セービンが提示した条件に従って、1962年から日本生ポリオワクチン研究所(現、日本ポリオ研究所)が経口生ポリオワクチンの製造を開始した。なおセービンはウイルス株をすべてWHO(世界保健機関)に譲渡した。また国際ロータリークラブと連携して、2005年をめどにポリオ絶滅の運動を行っていた。
[藤野恒三郎]