日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンテロウイルス」の意味・わかりやすい解説
エンテロウイルス
えんてろういるす
enterovirus
RNA(リボ核酸)ウイルスでピコルナウイルス科に属す。ポリオウイルス(1~3型)、コクサッキーA群ウイルス(1~24型)、コクサッキーB群ウイルス(1~6型)、エコーウイルス(1~34型)、その他のエンテロウイルス(68~72型)などが含まれる。エンテロenteroとは腸を意味し、腸管親和性のウイルスが多く含まれる。
エンテロウイルスは1本鎖のRNAをもち、ウイルス粒子は正二十面体、直径20~30ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、カプソメア(カプシドの構造単位)数32で、エンベロープ(外被)はない。ゲノムは感染細胞の細胞質のなかでmRNA(メッセンジャーRNA)として働く。
エンテロウイルスの分類は成熟度が低く、問題点を将来に残している。エコーウイルスといわれた数種が他の群に移行し、また、他の群からエコーウイルスへ移行されるなど変わりつつある現状である。新しく発見されたエンテロウイルスは通し番号をつけることになっており、A型肝炎ウイルスはポリオウイルス1型から数えて72番目のためエンテロウイルス72型とされている。特定の血清型ウイルスによっておこる疾患としては、手足口病(コクサッキーA群ウイルス16型)、流行性筋痛炎(コクサッキーB群ウイルス1~6型)、心筋炎(コクサッキーB群ウイルス1~5型)、急性出血性血膜炎(エンテロウイルス70型)がある。
[曽根田正己]